新型コロナウイルスについて、世界が中国共産党に対して怒っているにもかかわらず、また国内がこれほど苦しんでいるにもかかわらず、日本は中国に対して怒りを向けません。日本人は共産主義がどれだけ怖いものなのか、わかっていないようです。メディアが伝えない共産主義との関係について、歯に衣着せぬケント・ギルバート氏が解説。
※本記事は、ケント・ギルバート:著『強い日本が平和をもたらす 日米同盟の真実』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
共産主義勢力から防衛するための日米安保条約
アメリカは日米安保条約ができた当初、日本をソ連の脅威に対しての防波堤として考えていましたが、今は中国の脅威に対抗するためとして考えています。
中国が自国の中でおとなしく共産主義をやっていれば、まだよかったのですが、第二次世界大戦直後の混乱を利用して、火事場泥棒的にチベット・ウイグル・内モンゴルを手に入れました。
それでもアメリカでは、中央において、中国は覇権主義ではないと考える時代が長く続きました。経済が豊かになれば民主化するだろうということで、中国の世界貿易機構加盟を推進したのはアメリカの経済界です。
中国は、侵略などは考えていないと言いながら、表向きにはベトナム戦争に参戦してはいないものの、ベトナムという地域の奪取を狙っていましたし、北朝鮮を属国化しています。そして現在、国際機関を利用することを覚え、特に国連を活用してハイテク関係の委員会を牛耳り、自分たちの覇権主義を進めようとしています。
2020年4月には、世界中が新型コロナウイルス禍で苦しみ始めるなか、南シナ海の諸島に新行政区を設置する方針を明らかにしました。
ちなみに、南シナ海はかつて日本の管理下にありました。1939年(昭和14年)に、平沼騏一郎内閣が新南諸島の領有を宣言して、当時日本領だった台湾の高雄市に組み込みこんだのです。国際法上、日本の主張は正当だと認知され、実効支配を続けました。
実は、この管理が解除された事実がありません。日本側が放棄したわけでもなく、考え方によって南シナ海は、今も日本が管理するべき場所だと言うこともできないわけではありません。おもしろい話だと思います。
誰にも止められない共産主義の暴走
共産主義勢力の考え方および手法は、ある意味で緻密で賢く、さらには原理主義的で残酷です。
たとえば、2017年にバージニア州のシャーロッツビルで、南北戦争の英雄ロバート・E・リー将軍の銅像撤去に反対するため、集会を行っていた右系グループの群衆に車が突っ込み、死者が出るという事件がありました。現地には、右系グループの集会に反対するために「ANTIFA」を掲げる人たちも集まっていました。
トランプ元大統領は、この事件について「シャーロッツビルには、リー将軍の銅像を倒したくないというだけの、“いい人たち”もいたはずだ」とコメントしました。これをANTIFAは、トランプは白人至上主義者を容認し擁護した、と解釈しました。
トランプの真意は違います。白人至上主義者でない人たちもそこにいたはずだ、銅像が好きだというだけの人たちもいたはずだ、気の毒だ、と言っただけです。当たり前のことを言ったように聞こえますが、これはANTIFAの思想原理をまったくわかっていない発言です。
ANTIFAを掲げる人たちは、トランプの真意などはわかっています。それを利用することを考えるのがANTIFAです。
誤解するふりをして戦い続ける理由をつくり、今度は政府のトップ、トランプに対して牙を向けるのです。おそらく、ANTIFAはトランプの発言を知って、この人はまったくわかっていない、“潰せるな”となめてかかったはずです。
日本の「保守」と言われている政治家も言論人も、シャーロッツビル事件について、トランプのコメントのまずさというものがあまり理解できていないようです。
私たちは、中国はいうまでもなく、共産主義というものを脅威だと思わなければなりません。しかし日本人の多くは、共産主義がどれだけ怖いものなのか、やはりわかっていないようです。
新型コロナウイルスについても、世界中が中国共産党に対して怒っているにもかかわらず、また日本国内がこれほど苦しんでいるにもかかわらず、日本は中国に対して怒りを向けません。中国共産党が新型コロナウイルスを隠蔽しなければ、今回の不幸は何ひとつ起きなかった可能性が高いのです。
新聞やテレビをはじめとするマスコミも、新型コロナウイルスを中国の責任問題と関係づけて議論することはほとんどありません。