足の形が変形しているのに、自覚していない人が多いという。足の形が悪いと歩き方が悪くなり、足だけでなく体全体に負担がかかる。あなたの足の形は大丈夫だろうか。AERA 2020年10月12日号は、「足ケア」の方法を専門家に聞いた。
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歩き方の見直しで注目したいのは、「足の形」だ。アシックススポーツ工学研究所主席研究員の市川将さんによると、足の形と歩き方には「鶏と卵」のような関係があるという。
「足の形が悪いと歩き方が悪くなり、歩き方が悪いと足の形も悪くなります。私たちは足で体を支えて、立ち、歩いている。例えば外反母趾(がいはんぼし)が進行している人は、『かかとで着地して親指の付け根で蹴る』動作がうまくできず、ペタペタ歩きになる傾向にあります」(市川さん)
足裏にはかかと、母趾球(ぼしきゅう)、小趾球(しょうしきゅう)の三つの支点があり、それぞれを結んで三つのアーチを作っている。このアーチは着地の際のクッションになり、蹴り出すときはバネになる。
アシックスでは100万人以上の足形のデータを収集しているが、歩き方同様、足形も50歳を境に変形が見られたという。
「50歳以降の変化で特徴的なのは、足の幅が広くなること。長年体重をかけ続けることで横のアーチがつぶれ、幅広になっていくのだと考えられます」
日本で唯一の「足の総合病院」である下北沢病院の菊池守院長(45)は、足は消耗品であり、日常的にケアすることが不可欠だと指摘する。
「足が変形していることに気が付いていない患者さんが非常に多い。足のアーチがつぶれた状態では足をうまく蹴り出すことができず、足首や膝などに負担がかかります。早い段階からケアに取り組むことが大事です」(菊池院長)
菊池院長が最近特に気になるというのは、足指の付け根を曲げられない人が増えていること。試しに足で握りこぶしを作ってみてほしい。第一関節は曲げられても、付け根まで曲げられなかったら、足の筋肉が衰えている証拠だ。
そこで菊池院長がすすめるのが、タオルを指でつかむタオルギャザー。足裏や足指、足のアーチをつくる筋肉を鍛える効果があるという。足のアーチがきれいに保たれていれば、体重は理想的に分散され、足に無理な負担をかけずに歩くことができる。
正しい歩行ができているかどうかは、靴底のすり減りでも確認できる。
理想的な歩き方ができていれば、かかとのやや外側とつま先のやや内側がすり減っているはず。かかとの内側が大きくすり減っている場合は、重心が内側に傾いている可能性がある。左右非対称の場合も、足のアーチの崩れが考えられる。
「靴の裏のすり減り具合は年齢によっても異なります。高齢者は足全体でペタンと歩くため、かかとが減りません。また、若くてもヒールをはいてペタペタ歩きがクセになっている人は、かかとがすり減らない傾向にあります」(同)
どんな靴を履くのかも重要だ。やはり、ハイヒールやパンプスなどは、足への負担が大きいという。
「不安定な靴を履くと、足を筋肉で支えなければならず疲れやすい。特にハイヒールの場合は体重が足先にかかってしまう。人さし指の下に縦向きのタコができるし、外反母趾になる可能性もあります」(同)
最近はスニーカー通勤も受け入れられるようになってきたが、ハイヒールやパンプスを履かなければならないこともあるだろう。その場合は、できればヒールが4センチ以下で、足首や甲が固定できるものを選ぶとよいという。<ブーツ→ブーティー→ストラップ付きのパンプス→パンプス>の順に、足にかかる負担は増す。気楽そうに感じる大きめのサンダルなども足が固定されず、意外に負担がかかるというから要注意だ。
「負荷のかかる靴を履いた日は、足をケアすることが大切です。風呂上がりに10分程度、ふくらはぎをもみ、足指を曲げて伸ばし、足指の間を広げる習慣をつけてください」(同)
(ライター・井上有紀子)
※AERA 2020年10月12日号より抜粋
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