太平洋戦争末期、空襲の危険が迫る東京で、幼い子どもたちの命を救うため、保育園の保母らが独自に53人の園児を地方に疎開させた出来事があった。この、あまり知られない史実を将来に伝える映画「あの日のオルガン」で、気丈な主任保母・板倉楓を演じた。
いつ、どこに爆弾が落ちてくるか分からない日々。子どもの命を救おうと断腸の思いで子どもを預ける親たちや、その命を預かり、奮闘する若い保母の姿が描かれる。
撮影を前に、保育園で保育士の仕事を取材した。「保育士さんは、子どもたちが豊かに過ごせるような環境を作っていきたいとおっしゃっていました。子どもの未来は、いつの時代も変わらず考えられているんだと思いました」
本編の最後には、実際に「疎開保育園」を経験した人たちの現在の様子も紹介される。「そういう姿を見せられるのは、もうぎりぎりの時代だと思います。私ができることは小さなことだけれども、演じることで将来に伝えていきたい」
兵庫県神戸市出身。小学生時代から芸能活動をしていたが、中高生時代は「自分が本当に楽しいと思うことって何だろう、と探していた気がします」。
東京に出てきた16歳か17歳の頃、この仕事が自分には向いていないのではと葛藤した。父に「いやだったら帰っておいで」と言われたことをきっかけに、「そこから、ぶわって火がついて、成し遂げてみせる、甘えていられない。行けるところまで行こうと思った」という。
役者は「いろいろな世界を見て、疑似体験ができる仕事。自分が元来持っている能力よりもはるかに成長できるのが喜びです」。これからも常にステップアップを目指し、「10年、20年と残る作品に携わっていきたい」。
メッセージ
情報が多い世の中になったからこそ、自分にとって一番大事にしたいことは何か、一つでいいから見つけてほしい。みんなが右だといっても右を向く必要はまったくない。自分の世界にとどまることなく、世界を見てほしいと思います。
1988年8月17日生まれ、兵庫県出身。小学生の頃に芸能活動を始め、2006年に「デスノート」で映画デビュー。ドラマ「コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」ほか出演多数。19年後期のNHK連続テレビ小説「スカーレット」主演予定。映画「あの日のオルガン」は22日公開。(文・今井尚、撮影・関口達朗)
外部リンク