落語家・春風亭一之輔さん
2000年代から続く落語ブーム。映画やドラマの題材にもなり、落語が身近なものに感じられるようになりましたが、「古典落語=難しい」「寄席=敷居が高い」といったイメージを持つ人も多いかもしれません。
人気落語家の春風亭一之輔さん(41)は、「落語は気楽なもの。ふらっと立ち寄れる足湯みたいな感じで、一度来てみてほしい」と話します。
2001年に師匠の春風亭一朝に入門して、前座、二つ目と昇進し、12年に真打ちになりました。入門当時と比べて、寄席で若い人や女性の姿を見かけるようになりましたね。初めて来たというお客さんに「思ったよりわかりやすかった」と言われることも多いです。
落語って伝統芸能ではあるけど、堅いとか、古くさいといったイメージで来られるとちょっと違うんです。笑いを題材にしているし、基本的に現代の言葉で話しているので、予備知識とかなくても楽しめるものなんですよ。寄席っていうのは本来、ふらっと来る場所ですからね。
ゆったりしていて楽な空間
僕も高校生の頃、浅草演芸ホールにふらっと入りました。初めてだったのに「楽な空間だな」と思ったんです。ゆったりしていて、出入り自由。用事があれば途中から入って、疲れたら帰っても良い。
1人の持ち時間もトリ以外は10~15分で、いろんな落語家や芸人が次々に出てくるので、自分のお気に入りを探すみたいな感覚で行ったら良いんじゃないですかね。
こういった寄席とか落語会って、驚くほどたくさんあるんですよ。定席っていう常設の寄席だけで東京に四つありますし、地方での落語会も増えてきたので、行こうと思えば結構すぐに行けちゃう。
寄席の場合はほぼ当日券なので、事前にチケットを取る必要もありません。お値段もね、大体3千円とかなので、コンサートや演劇なんかに比べるとずっとお手頃だと思いますよ。
家事をしながらCDで聞いても
土日や夏休みには小学生もよく来てくれます。落語家は出番前の楽屋でその日のネタを決めるんですが、客席をのぞいて「あ、今日は子どもが多いな」って思ったら、僕の場合は子どもに合わせたネタを選びます。
間違っても吉原のネタとかにはしないようにね。最近はCDやDVDもいっぱい出ていますから、「通勤中に落語を聞いています」という人も多いんですよ。1本が15分とか30分だから、移動中にちょうど良い尺。家事をしながら聞くのも良いと思いますよ。
僕はよく温泉に例えるんですけど、例えば歌舞伎が高級温泉旅館だとすると、落語は足湯みたいな感じ。いつ行っても良いし、そんな高いもんでもない。江戸時代から今までずっと続いているっていうことは、落語に出てくる人間のおもしろさや弱さ、ずるさが現代にも通じるところがあるから。
そんな話を聞いて笑う場所なので、敷居の高いイメージを持っていた人も一度見に来てもらえればわかります。気軽な気持ちでふらっと寄席に来てみてください。
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春風亭一之輔
1978年、千葉県生まれ。2012年に21人抜きの大抜擢(ばってき)で真打ちに昇進。ラジオへのレギュラー出演や雑誌連載のほか、子どものための落語本「春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!」などの著書多数。9月まで全国ツアーを開催中。(写真/キッチンミノル)
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