本屋さんにはたくさんの本があふれ、お子さんに手渡す1冊に迷ってしまうことがありますよね。子どもの本を専門とする東京子ども図書館(中野区)の綿引淑美さんが、最近出た本の中から、おすすめの3冊を紹介します。今日は、中学年からの1冊です。
『あみかけクジラ』
文 川村たかし、絵 赤羽末吉、BL出版、1728円
生死をかけクジラにいどむ
日本では、古くからクジラをとってくらしてきました。肉を食べ、あぶらをしぼり、血は畑のこやしにして、ほねもすじもあますところなく利用しました。この本は、今から400年前の紀伊国・太地(今の和歌山県太地町)のクジラ漁の話です。
むかし、でんじという村一番の漁師がいたそうです。あるとき、漁をしているところにやってきた大きなクジラを、1人でとろうとしておぼれかけます。それを助けたいえもんは、みなで力を合わせてクジラをとろうと村人たちによびかけました。
村をあげて舟やモリを作り、あみを用意して漁に出ると、親子のクジラに出合います。子どもをかばってあばれる母クジラにあみをかけようとしますが、うまくいきません。そこへでんじがやってきて、あみを持って海にもぐり……。
クジラと人間の、生きるか死ぬかのきびしい戦いが、勢いのある絵とともにえがかれています。特に観音開きのページは迫力満点。続巻の『もりくいクジラ』『クジラまつり』もあわせて読んでください。
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次回配信では、高学年からの1冊を紹介します。
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