旅立ちについて
朝日中高生新聞で連載しているこのコラムも最終回です。はじまりがあれば、終わりがあるものです。永遠なんてないですから。でも終わってもなんだか続くものって、残るものってあるよね。それは「記憶」とか「思い出」とかです。
愛し合ってるふたりにだって終わりが来る。人間て、みんなそう。はじまりがあれば終わりが来る。でも、死がふたりを分かつとも、愛の記憶は残るのです。これが大事だと思うんですよね。何が、残るか。みんなは若いからそんなこと考えないと思うけど。でもこれは、一生のテーマです。
何が残るか。何を残して死ぬか。
生まれてから死ぬまで、最高!なんてことはないのです。トータルなんとなくよかった、とか、ある時期だけすごく幸せだった、でもいいし。お友達と別れるのも、新たな出会いのためです。そして、別れてからかみしめるものがある。気づくことがある。そのほうが、もしかしたら、今までよりも尊いかもしれません。
だから、みんな、今を生きよう。つらいことがあっても受験がすごく嫌でも、なんとなく孤独で、先が見えなくても、でも、それも終わってみれば、ああなんだかいい思い出だし、生きたって感じダァ!と思うものなのです。
さようなら、また会う日まで。私はこの紙面で、いい思い出と手応えを感じさせてもらいました。「読者です!」という中高生にも会えた。みんなが何かヒントをつかんでくれたら、ひとことでも記憶に残る言葉があったら、うれしいです。
はじまりがあれば、終わりがあり、終わりがあれば、はじまりがある。それを覚えておいてね! 大切なのは、はじまることでも、終わることでもなく、私たちが今、生きている、ということなのです。今、試合中だということなのです。物語の主人公である、その真っただ中なのです。
つらい章があっても、本を閉じないで、ぐっと我慢してページをめくりましょう。そして自分の人生の物語を、作っていこう。悲しい章があれば、幸せな章もある。悔しい章もあれば、報われる章もある。理解されなくて苦しい章もあれば、やっと分かち合える友に会える章もあるでしょう。
人生は旅です! ありがとう!
大宮エリー 1975年、大阪府生まれ。作家、画家。エッセー『生きるコント』『大宮エリーの なんでコレ買ったぁ?!』をはじめ、著書多数。最新刊は絵本『虹のくじら』(美術出版社)。
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