音楽はお好き?「情景うかぶビバルディ『四季』」
暖かくなると花もさき、動物も活動を始めます。新学期も始まって、春は喜ばしい季節ですね。
春を歌った曲は、たくさんあります。文部省(現在の文部科学省)唱歌「春が来た」から始まって、モーツァルト「春へのあこがれ」、ピアノ曲ではメンデルスゾーンの「春の歌」、シンディング(ノルウェー、1856~1941年)の「春のささやき」、ベートーベンのバイオリンソナタ「春」、シューマンの交響曲「春」にいたるまで目白押しです。
なかでも一番有名でよく聞かれるのは、ビバルディ作曲の「四季」から「春」です。1725年にオランダのアムステルダムで出版されたこの曲は、正確には「バイオリン協奏曲集・和声と創意の試み」第1集の冒頭にあります。
作曲者本人が独奏するために書かれ、独奏バイオリンと弦楽合奏が交互に演奏するものです。おそらくはビバルディ本人が書いたと思われる十四行詩(ソネット)が付いています。これを読みながら音楽を聞くと、情景が頭の中にうかんでくることもあり、人気があります。
最もよく演奏される第1楽章は、次のように構成されています。「春が来た」(楽しい音楽)~「鳥が鳴く」(高い音でのさえずり)~「春が来た」~「泉のせせらぎ」(波の音型)~「春が来た」(少し悲しく短調で)~「再び鳥が鳴く」~「春が来た」――。「春が来た」が何度も出てきますね。つまり、何回も出る「春が来た」の間に、春のさまざまな情景がはさみこまれるように作られているのです。
くり返し出てくる音型を「リトルネロ」と呼ぶので、「リトルネロ形式」という作曲法で書かれています。ぐるぐる回る感じの「ロンド形式」とほぼ同じですが、こちらは昔、おどりの曲だった名残をとどめています。
この曲をまだ知らない友だちに聞かせ、何をえがいているかたずねてみると、面白い結果が出るでしょう。割と当たりますよ!
詩と曲、どちらを先に作ったのかはわかりませんが、ピッタリ合っているので、まず詩を考えてから作曲をしたのでしょうね。
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青島広志(あおしま・ひろし)。1955年、東京生まれ。東京芸術大学、同大学院修士課程を首席で卒業、修了。「火の鳥」「11ぴきのネコ」などこれまでに200曲あまりを作曲。著書に『クラシックの時間ですよ!』など。東京芸術大学講師、洗足学園音楽大学客員教授。テレビ出演多数。イラストも筆者
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