俳優 細田佳央太さん
参加者1千人を超えるオーディションを勝ち抜き、映画「町田くんの世界」で主人公の高校生、町田一を演じた。華々しい主演デビューだが、オーディションでは手応えを感じていなかったという。
石井裕也監督に「もっとリアルに」とダメ出しされ続け、待ち時間にスマホで「お芝居_リアル」と検索した。「何度やってもできなくて、ほんと無理だ、と思ってました」と振り返る。
石井監督が褒め言葉として口にしたのは「素直さ」。全人類を家族のように愛し、困っている人を見つけては駆けつける町田くんのキャラクターに、どこか通じるが、「自分の抱えた問題から逃げないでちゃんと考えるまっすぐさは、近いかな?」と謙虚にとらえる。
小学生の頃に芸能界に興味を持ち、ドラマや映画に出演。今作で、池松壮亮さん演じる雑誌記者と向かい合うシーンで、「役者として生きる」と心が決まった。「生まれて初めて、お芝居が楽しいって思った瞬間だったんです。
カメラ位置が変わって休んでる時も高揚感があって、にやけが止まらない!ってレベルで楽しかった」実力派俳優に引っ張られ、食らいついた。「ずっと頭を回転させて、自分の持っている力を毎回、全部出すって本当に大変なんですけど、だからこそめちゃくちゃ楽しいんですよね」
現在、高校3年生。「かっこつけたがる時期」で、周りは無意識のうちに力を出し切らないようにしているのでは、と感じる。「町田くんを見ると、一生懸命だからこそかっこよかったり、すてきだったりするんだなと思います。
町田くんを演じて、何をするにもこのくらいの熱量でやっていかなきゃいけないんだって思うようになりましたし、役者としての大きな基盤になりました」
【メッセージ】
バスや電車で席を譲るって、自分には勇気がいることなんですけど、町田くんはそんなこと考えないくらい優しいので、緊張しないんですよね。この映画を見終わった後に、誰かに優しくしたいって思ってもらえたらうれしい。「見習ってほしい」までは言わないですけど、できるようになってもらえたら、すごくうれしいですね。
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2001年12月12日生まれ、東京都出身。出演作に映画「探偵ミタライの事件簿 星籠の海」、ドラマ「先に生まれただけの僕」「FINAL CUT」などがある。映画「町田くんの世界」は公開中。
(文・岩本尚子、写真・慎芝賢)
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