混乱する大学入試
何が問題?小学生にも影響するの?
みなさんにとって、大学はどのような存在でしょうか。中学・高校のさらにその先にあることから、イメージしにくいかもしれません。実はいま、大学に入るための試験(大学入試)をめぐって大きな混乱がおきています。その影響は小学生にもおよぶ可能性があります。何が問題になっているのかまとめました。(編集委員・沢辺雅俊)
収入や地域で格差出る心配
Q(質問) 大学ってどうやって入学するの?しくみから教えて。
A(答え) 国公立大学の場合、解答用紙の選択肢をぬりつぶすマークシート式の「大学入試センター試験」を受けてから、それぞれの大学が実施する試験を受けるのが一般的な流れだ。私立大学の場合、各大学が実施する入試が基本だけれど、約9割の大学が何らかの形でセンター試験を利用している。この試験が2020年度から「大学入学共通テスト」(21年1月実施)にかわる。いまの高校2年生がおもな受験生になるよ。
Q 何が問題なの?
A 共通テストでは①英語では共通テストによる英語の試験とともに民間の資格・検定試験も使う、②国語と数学では「記述式」も導入する、とされていた。これらに対して批判が集まり、混乱がおきているんだ。
英語の場合、いまの大学入試センター試験で直接はかれるのは「読む力」と「聞く力」とされている。グローバル化が進むこれからの世の中では自分の意見や考えを相手に伝える力(技能)が求められる。大学入試でもこうした力を評価しようと「話す力」「書く力」をはかるために民間の資格・検定試験(7種)を活用することにした。
ところが「受験料が2万円をこえる試験があり、経済的に苦しい家庭は受けにくい」「試験によって実施する会場が制限されている」など家庭の収入や住んでいる場所によるちがいで、不利になる受験生があらわれるといった問題が浮かび上がっていた。
萩生田光一・文部科学大臣が10月に「身の丈に合わせてがんばってもらえば」などと発言したことで「格差があることを許している」と、一気に批判が高まった。
Q どうなるの?
A 民間の資格・検定試験については20年度からの活用は見送られることになった。そのうえで「新たな試験は、いまの中学1年生が受けることになる24年度から始める」「今後1年をめどに新たな制度を検討する」そうだよ。20年度の共通テストは、これまでの方針をかえずに「読む力」「聞く力」をはかる試験を実施する。
国語の記述 正確な採点はむずかしい
Q 記述式の出題はどうなるの?
A 批判が集まっているのは国語のほう。80~120字で書くものなど3問がもりこまれ、3問全体を5段階で評価する。でも「受験生が自己採点をするのはむずかしい」「学生のアルバイトが採点にくわわるので、質にばらつきがあるのでは」と心配する声が強まっている。
受験生はテスト中、自分の答えを書き写し、あとで正答とくらべて採点するけれど、この自己採点が正確でないと、どの大学を受けるかをしぼりにくい。記述式の場合、書き方に「自由度」があるから採点もたいへん。50万人以上が受けると見られており、その答案を短期間に正確に採点するのはむずかしいというのが実情だ。
国公立大学は共通テストの結果で受験生が個別の試験を受けられるかどうかをしぼりこむことがあるけれど、文部科学省では国語の記述式の出題を判断材料から外すように求めることも考えているらしい。
記述式、他教科にも
Q 小学生にはあまり関係なさそうだね。
A いや、そうとも言えない。英語の新テストの導入は24年度から、いまの中学1年生がおもな受験生になる。さらに24年度からは記述式を地理歴史・公民や理科に広げることについても検討する、とされている。いまの小学6年生はその次の年度に受けることになる。大学入試をめぐる動きにアンテナを張っておくのがよさそうだね。
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