今も師と仰ぐのは、厳しい指導で知られた演出家の故・蜷川幸雄さん。14歳でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞に輝いたものの、10代後半から「演技って何なのかわからなかった時期」で、もがいた。そんな中、舞台「海辺のカフカ」の主演に抜擢された。
俳優として現場にどのように「居る」べきか、態度やマナーから始まり、演技も基本からたたき直された。「俳優って、いろんな人から言われたことを、どうやったらできるんだろうって探りながらやっていくことが多いと思うんです」。
蜷川さんや、映画「許されざる者」の李相日監督に厳しく指導されたことで、「これができなきゃいけない」という目標が見つかった。「怒られたり厳しくされたりするのは、逆にラッキーでした」。感謝は尽きない。
映画「泣くな赤鬼」では、高校の先生に再会する青年を演じた。高校時代の愛称は「ゴルゴ」。当時の野球部の監督に、10年ぶりに「赤鬼先生!」と呼びかける。
ゴルゴは赤鬼先生に「努力する才能」がないと言われ、野球部も高校も辞めてしまったが、幸せな家庭を築いている。「あの時はあんまり話せなかったけど、ちょっと成長して、話せるタイミングだから会えたのかなってこと、ありません? うれしいですよね」
屈託なく赤鬼先生に笑いかけたゴルゴは、直後、胃がんで余命半年と告げられる。人生でやり残したことは、野球。その思いをかなえようと、赤鬼先生が奔走する。
自身がやり残したことといえば、中学3年の修学旅行。映画の海外ロケと重なった。「修学旅行は行きたかったけど、ロケで得たものがあった。サッカー選手になりたかったけど、俳優の道に来られた。それはそれでよかった、と思います」
メッセージ
今回は、どういうふうにがんばればいいのかわからなくて壁に当たっているキャラクターを、共感しながら演じたんですけど、作品を通して客観的に感じたのは、わからなくても自分を信じて毎日コツコツがんばることが大切なのかもしれない、ということ。学生生活、大変だと思いますけど、がんばってください!
1990年3月26日生まれ、東京都出身。出演映画に「誰も知らない」「すべては海になる」「許されざる者」「銀魂」「銀魂2 掟は破るためにこそある」など。「泣くな赤鬼」は公開中。
(文・岩本尚子、写真・近藤理恵)
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