参議院議員選挙は21日が投開票。いまは選挙戦の真っ最中です。選挙でないときのふだんの参議院は、衆議院と比べて注目が集まりにくい存在です。もっとも政治の現場では、政策をじっくり考えられる長所や、法案作りへの影響力など、かくれた力を発揮しているといいます。(松村大行)
「解散」なく、長期的視野で
有名コーヒーチェーンなどの経営にたずさわってきた松田公太さん(50歳)は、2010年の参院選で初当選しました。エプロン姿で自分の経歴をアピールしたり、会社経営で苦労した話がひびきそうなビジネス街で演説したりと、工夫をこらして戦いました。
任期を終えた16年に政界を退くまで、所属したのは国会議員の数が少ない政党二つ。何度も国会で質問の場に立ち、政党「日本を元気にする会」を立ち上げて代表にもなりました。
そんな環境にいても、「衆議院の方が目立つ」と感じたといいます。たとえば参議院で法案を議論するのは、ほとんどが衆議院で可決された後です。「参議院は議論はするけども影響力はないのでは、とみられがちです」
それでも衆議院議員になりたいとは思わなかったそうです。理由は、衆議院には任期の途中で職を解かれる「解散」があること。いつあるかわからない選挙で勝つことがどうしても優先され、長期的な視野で政策を実現するという思いが後回しになってしまうと松田さんは感じました。
一方で参議院では任期が6年間と決まっています。「経営者の仕事では決められた期間の中でどんな仕事をしよう、いつまでに結果を出そうと目標を定めます。そういう意味で参議院議員は自分に向いていました」
結果的に、選挙運動でインターネットを使えるようにするなど、「選挙の公約にかかげた政策を実現できた」と話します。
法案通すため与党が相談
衆議院も参議院も選挙で議員を決めます。議院が二つあっても選挙をするのは一つだけの国(イギリスなど)と比べ、国民の意見を政治にとどける機会が増えます。
ただし憲法は二つの議院をまったく同じ役割にしていません。予算の議決や内閣総理大臣の指名などは、衆議院の議決を優先します(衆議院の優越)。ルールの上で参議院は、立場の弱い存在です。
もっとも一橋大学教授の只野雅人さんは「政治の現場での立場は案外強い」とみています。
カギをにぎるのは、法案が参議院で否決された場合に、衆議院で再び3分の2以上の賛成を得れば成立する憲法のルール。本来は衆議院の立場を強くするしくみです。しかし、「選挙で3分の2の議席を得るのはかなり難しい」。70年以上続く今の国会で、連立する政党で合わせて3分の2にとどくことはあっても、一つの政党がとどいた例はありません。
政権をになう与党は法案を確実に通すため、案を考える段階で参議院議員に意見を聞きます。内閣でも必ず参議院議員を大臣に選びます。「参議院には、外から見えにくい強さがあります」
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