アメリカの女子高生が学力や自己表現力などを競う「全米最優秀女子高生」で2017年、日本人の母親を持つスカイ・ボークさんが優勝しました。スカイさんの母親・重子さんが、グローバル社会で活躍する子どもを育てるために必要な資質をまとめた『世界基準の子どもの教養』(ポプラ社)が20日、発売されます。重子さんが子育てで大切にしてきたことなどを聞きました。(浴野朝香)
世界基準の教養備える子育て術
重子さんはイギリスで現代美術史の修士号を取得後、アメリカに渡りました。結婚、出産を経て起業し、子育てをしながら、グローバル社会で活躍する人たちとともに働いています。
見事な経歴に思えますが、「実は苦労の連続でした」と話す重子さん。どこに行っても、会話に入れなかったり、仕事のチャンスを失ったりしたことがしばしばだったそうです。
どうしたらグローバル社会で活躍できるのか。悩んだ重子さんは、活躍している人たちが共通して身に付けている知識やスキルを観察して学び、自分と子どもの教育に生かすことにしました。
そのスキルの中で最も大切だと感じたのが、自分の意見を持つことでした。重子さんの周りで活躍する人たちはみな、自分の意見をしっかりと持ち、常に議論しながら最適な解決法を見いだすというやり方を日常的に行っています。
「あなたはどう思う?」
そこで、自分の意見を持ち、表現できる子どもを育てるために、家庭では子どもとの会話を最も大切にしてきました。どんな時も「あなたはどう思う?」と子どもに尋ね、自分の考えを整理し、結論を出すという習慣を付けさせました。
「子どもがどんな意見を言っても決して否定はしません。それは子どもの考え方なので尊重する。ただ、考えを論理的に説明できなければ説得力がないということを伝える必要があります」
対話を増やすために重子さんが徹底していたのは、「子どもと同じことをやってみる」でした。ゲームでも読書でもブロック遊びでも、何でも同じものを体験して、子どもがどんなことを楽しいと思っているのか、いっしょに体験すると会話が増えると言います。
そんなことを言っても、子どもは親の言うことを聞かないし、宿題はやらないし……。というおかあさんたちの声が聞こえてきそうです。
日本の教育を受けて育った重子さんも、塾の先生をしていたおかあさんに「勉強しなさい」と言われて育ちました。何の疑問も抱かず勉強していましたが、学年が上がるにつれ、成績が急激に下がってしまいました。与えられたものをひたすらやるという習慣は身に付いていたものの、考える力が付いていなかったのだと言います。
そこで重子さんは自身の子育てでは「やりなさいとは言わない」ことを決めました。しかし決めただけでは、すぐに「やりなさい」と言ってしまいそうです。そこで、紙に「やりなさいは言わない」と書き、冷蔵庫に張りつけ、毎日見て戒めにしました。「まずは3週間続けてみてほしい。3カ月後には、意識しなくてもやりなさいとは言わなくなると思います」
ボーク重子 ライフコーチ、アートコンサルタント。福島県出身。大学卒業後、外資系企業に勤務。退職後、イギリスの美術系大学院で美術史を学ぶ。アメリカに渡って結婚後、アートギャラリーをオープン。著書に『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』(ダイヤモンド社)など。
『世界基準の子どもの教養』(ポプラ社)
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