レゴを使って言いたいことを見える化する
前回、レゴブロックを用いてグループ学習をする高橋一也先生の授業のあり方を紹介した。
レゴを持ち出すのは、何も奇をてらったり遊び心からというだけじゃないんだ。高橋先生が説明してくれた。
「レゴでいったん言いたいことをかたちにするというのは、英語は、いえ言葉そのものは、自分の考えを表現する道具であるということを明確に感じさせる過程でもあるのです。
言葉とは何かを伝えるためにうまく使うものであり、それがときに日本語、場合によっては英語だということ。
そう実感できれば、語学を学ぶ意味も深く理解できるはずです」
そうだな、意義や意味を納得できればこそ、主体的な学習意欲も湧くというものだろう。
リアルな社会問題を取り上げ意欲を高める
高橋先生の授業では、かようにディベートやグループでの調べ学習などを多く取り入れるのだが、そのときの題材選びも重要だ。
難民問題など、世界中で現実に起きている、喫緊の話題を取り上げるのが基本となっているんだ。
「This is a pen. のような意味のない英文を覚えることに、主体的で能動的になれといっても無理でしょうからね。
理解したい、使ってみたいと思える内容で学ばなければ、意欲を保てと言われても難しい。
学校の現場ではとかく現実の社会とリンクしている生々しい事象を避ける傾向にありますが、むしろ逆にするべき。
できるだけリアルで時代性のある、そして生徒たちが自然に関心を持つ内容を扱ったほうが効果的です。
考えてみてください、教室の内側に閉じこもっている知識なんて、そこから一歩でも外に出たら通用しません。
扉を開けて、どんどん積極的に社会とつながってこそ意味がある学びができるはず。
学びは常に拡張性を意識しておかなければいけません」
思えば教育の現場だって社会の一部だ。時代に応じて変化していくのは当然のことだな。
教える側も学ぶ側も、昔ながらのやり方をただ踏襲しているというのではまずい。
そんな危機感を抱くべきだというのが、高橋先生の教えなのだ。
高橋一也 1980年1月1日、秋田県生まれ。英語教諭。工学院大学附属中学の教頭。慶應義塾大学、同大学院で英文学を研究した後、アメリカに留学。ジョージア大学で、最も効果的な教育を設計・開発する方法論である「インストラクショナル・デザイン」を研究。帰国後、2015年から工学院大学附属中学・高校で教鞭をとる。2016年、教育界のノーベル賞といわれるグローバル・ティーチャー賞のトップ10に日本人で初めてノミネートされる。現在、オランダ・ユトレヒト大学大学院にて発達認知心理学の研究に取り組む。
* * *
「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
※高橋一也先生のインタビューは、7月1、3、5、8、10日に全5回配信します。今回は第3回でした。
外部リンク