会話力がない? グループでの会話や雑談への苦手意識
人の輪を前にすると、なんとなく尻込みしてしまう。事務的な要件以外の雑談を振られると、頭が真っ白になる。必要なことは話せるのに、個人的な話やムダ話になると緊張し、何をどう話していいのか分からなくなってしまうという人は少なくありません。
内気でシャイであっても、必要に迫られて話していくうちに、会話には多少慣れていくものです。しかし、特に最近ではメールをはじめとするコミュニケーションツールが浸透してきたことで、面と向かって話さなくても意思や情報が伝えられるようになり、以前のように「場数を踏んで、会話に慣れる」という機会が格段に少なくなってしまいました。
内気でシャイな人にとって、メールほど心強い味方はないでしょう。しかし、ツールに頼っているうちに、対人接触の機会は激減していき、人と話すのがますます苦手になる……こんな悪循環に陥っているのではないでしょうか。
会話力の基本! まずは問いかけに自分の言葉で答える
年齢を重ねるにつれ、雑談から人の輪を広げるお付き合いも増えていきます。苦手意識がある場合でも、できる範囲で、人と対面で話をするクセをつけていくのは大切な心がけです。
とはいえ、内気でシャイな人にとって、自分から雑談を振ることは、ヒマラヤ登山のように高いハードルに感じられることでしょう。
しかし、「最初から無理をして話を振らなくてもいい」のです。むしろ大切にしたいのは、「話しかけられたときに自分の言葉でしっかり応答する」ということです。これさえできれば、会話力は確実にアップします。
「今朝は早いですね」と話しかけられたら?
たとえば、朝の出勤時に、「今朝は早いですね」と声をかけられたとき、普段のあなたならどう答えますか? 「まあちょっと」「あ、はい」、こんなあいまいな応答で終わっていないでしょうか?
尻切れトンボな応答で会話が途切れるようでは、人とのコミュニケーションはまず成り立ちません。こうしたときには、「なぜ早く出勤したのか」を自分の言葉でしっかり答えることが、大切なのです。
「いつもより30分も前に目がさめた」「仕事がたまっちゃって……」など、何かしら理由があるはずです。そうした自分なりの事情をしっかり伝えること。投げかけた言葉に自分の言葉で応答してもらえると、相手は好感を持ってくれるはずです。
会話力向上の第一歩! 「応答力」トレーニング実践編
時間があれば、「よくある問いかけ」に自分なりの応答を書いて考えることも、会話力向上のトレーニングになります。応答には、「正解」はありません。例題を出しますので、自分なりの応答を自由に一文で書いてみてください。
●1.天気の話題
「毎度おなじみ」の天気の話題です。天気予報の情報、洗濯物の心配、今日の予定など、天気にまつわる問いかけに、自分なりの応答を書いてみましょう。
・「今日はいい天気ですね」→
・「今日の天気はいまいちですね」→
・「今日の天気はどうなるんでしょうね」→
●2.外見の話題
外見は印象的であるため、よく問いかけられます。次のような問いかけには、どんな応答をしますか?
・「今日のネクタイ(マフラーetc.)、おしゃれですね」→
・「髪の毛、切ったんですね」→
・「今日の印象、ちょっと違いますね」→
●3.プライベートの話題
プライベートのことを問いかけ、心の距離を縮めたいと思う人は多いものです。次のような問いかけへの応答を書いてみましょう。
・「お住まいどちらですか?」→
・「週末はどこかに行かれるんですか?」→
・「先日の帰省のお土産、おいしかったです」→
・「奥さん(だんなさん、お子さん、ご家族)お元気ですか?」→
・「○○が趣味(詳しい、上手etc.)なんですってね」→
いかがでしたか? こういう投げかけに「自分ならこう答える」というパターンをあらかじめ想定しておくと、気が楽になると思います。ウケねらいの言葉、奇をてらった応答を考える必要はありません。自分の経験や自分の感想を素直に答えることです。
会話・雑談が苦痛すぎる場合、「社会不安障害」の可能性も
ところで、内気でシャイな人のなかには、こうしたコミュニケーションが非常に苦痛で、話しかけられるだけでドキドキし、上記のような会話のトレーニングを頭の中で考えていても、実際の場になると頭が真っ白になってしまう人、消えてしまいたい気持ちになるという人もいるでしょう。
そうした場合、性格だけの問題ではなく、「社会不安障害」と呼ばれる精神疾患の可能性も考えられます。
社会不安障害とは、人前で話したり、人と交流したりすることに強い緊張と苦痛を感じ、それらを回避し続けるうちに日常生活に支障が出て、孤立していく精神疾患です。「内気すぎる性格のせい」と考える人が多いのですが、現在では治療できる病気とされ、薬物療法を中心とした治療の効果が期待できるようになりました。
したがって、コミュニケーションの努力、気の持ちようではどうにもならない場合には、精神科を受診し、必要な薬を服用しながら精神療法を併用して、思考と行動の修正を行っていくことが大切になります。
【参照】
・対人恐怖症(社会不安障害)の特徴・原因・症状
・対人恐怖症(社会不安障害)の治療法
文:大美賀 直子