新型コロナ、職業別リスク。歯科衛生士は危ない(写真はイメージです)
「歯科衛生士や歯科医の感染リスクが高いのは当然です。私を含めた多くの医師は、ウイルスを通さない『N95マスク』を着用しますが、歯科医院だけは一般的なマスクを使っていますから」
歯科衛生士の防護装備を
「フェイスシールドを着用しても、治療や処置で飛び散る細かいしぶきを完全に防ぐのは無理。長時間、バイ菌だらけの口の中をいじるわけですから。いまの歯科は、歯石を取るなど定期的クリーニングが増えており、歯科医よりもクリーニングを担当する歯科衛生士のほうが処置時間は長い。せめて防護装備はしっかり整えてあげてほしい」
救急救命士より介護士
「救急搬送者と密に接触すれば、咳やくしゃみを浴びやすくなります。そもそも前提として体調不良の患者さんですから、新型コロナかどうかは別として感染症をもらうリスクはあるでしょう」
「それでも看護師のリスクは高いと思う。たしかに体液をモロにくらう処置は少ないかもしれませんが、タンを吸引する処置では飛沫を浴びやすいはずです」
「高齢者を支える大変な仕事ですが、日々見守っているため相手の体調をよく把握しています。どういう体調かわからない人に囲まれる仕事よりはリスクが低いかもしれません」と前出の徳田室長。
「性風俗従事者は、せいぜい1日に5人ぐらいしか、お客さんと接しないでしょう。でも、キャバクラ嬢が接するお客さんは、その何倍にもなるだろうし、性風俗従事者よりもお客さんとの会話が多いのではないか」
脱毛サロンも危険
「脱いですぐに持ってこられたものや、昨日着た洋服などは表面にウイルスが付着しているかもしれません。このウイルスは、モノの表面で3日間ぐらいは生きるとされています。店員さんは、持ち込まれた衣服を扱った手でそのまま、目や鼻、口などを触らないように注意したほうがいいでしょう」(徳田室長)
「タクシーが乗せる客はだいたい2~3人。バスはもっと大勢を乗せて走ります。パイロットは誰にも会わなさそうですが、乗務前には多くのスタッフと複数のミーティングをこなします。どの運転手であっても、アルコール検査や点呼時にリスクが発生していそうです」(勝田教授)
「陽性患者のご遺体はパッケージされるなど感染防止策が徹底されています。しかし、業者は一般の葬儀で不特定多数の遺族や参列者に応対しなければなりません」
「マッサージ店の従業員は、狭い個室で客に密着するようであればリスクは高まります。広い空間で換気しやすい職場環境ならば別ですけれども。脱毛サロンも、密閉された狭い空間で施術することが多い。とりわけ、男性の口のまわりのヒゲを脱毛するときがいちばん危ないと思いますね。最近の若い男性は、ヒゲの脱毛をする人が増えているみたいですから」(前出・佐藤院長)
「屋外で人とほとんど会わずに黙々と作業しますからね。人と会わなければ感染しません。逆にどのような業界であっても、多くの人と会う仕事ならば注意が必要です」(前出・上理事長)
感染リクス
高い職業
歯科衛生士・歯科医・産婦人科医・救急救命士・獣医師看護師・キャバクラ嬢・風俗嬢
「動物は状況を説明できないので、獣医師は飼い主からじっくり話を聞くしかない。この間接的な問診が感染リスクになる」(佐藤院長)
「体調が悪いのにキャバクラや性風俗店に行く人はまずいないだろう。しかし無症状感染者は別で、隣に座って接客するのは危ない」(勝田教授)
「性風俗業では超濃厚接触は必然のため、そもそも感染予防の取り組みはしているはず」(佐藤院長)
やや高い職業
宅配業・ゴミ収集業・バス運転手・介護士・警察官・葬儀業・通訳・クリーニング店従業員・鉄道駅員・中学教師・整体師・マッサージ店従業員・脱毛サロン従業員・消防士・保育士・レジ係
「宅配業は1日に100軒近く回ったりする。玄関先で客と会話し、印鑑を押してもらう。荷物にウイルスがついていても不思議ではない」(佐藤院長)
「警察官は、理性的に行動しそうにない人を相手にする場面が多い。大声をあげて飛沫を飛ばしながら騒ぐ人や酔っぱらいの話も聞かなければならないのはリスクだろう」(勝田教授)
「米国はキャッシュレスが進んでいるが、日本はかなり遅れており、レジ係は多くの人が触った現金の受け渡しが危険」(佐藤院長)
やや低い職業
学校用務員・修理工・美容師・受付業務・秘書・一般事務・ネイリスト・パイロット・タクシー運転手・遊園地キャスト・ウエートレス
「美容師は客と接する時間が長い。しかし、主に客のうしろに立ってカットするため会話をしても飛沫を浴びるリスクは低そう」(徳田室長)
「会話が欠かせない職業で、受付業や秘書が、通訳よりもリスクが低いのは接触時間が短いからだとみられる」(徳田室長)
「ネイリストは客との距離のとり方しだい。できれば腕を曲げた状態ではなく、伸ばした状態で作業するようにしたい」(佐藤院長)
低い職業
フィットネストレーナー・警備員・弁護士・レストランシェフ・大工・農業・木こり・画家・彫刻家
「エアロビなどのフィットネストレーナーはさほどリスクは高くない。汗にウイルスは含まれておらず、トレーナーは声を出しても、客は声を出さずに身体を動かすだけなので」(佐藤院長)
「画家や彫刻家のリスクが低いのは自分ひとりの世界だから。狭く密閉されたアトリエであっても、1人で作業しているかぎり感染しない」(徳田室長)
※ニューヨーク・タイムズ紙が報じた感染リスクの評価区分(以下のカッコ内)を次のように置き換えた。(ほぼ毎日〜週数回は感染機会あり)→高い、(週1回〜月数回)→やや高い、(月1回〜年数回)→やや低い、(年1回〜ほぼ感染機会なし)→低い。職業は抜粋で、日本固有の職業事情などから、保育士、消防士、レジ係、ウエートレスは1ランク上げ、キャバクラ、性風俗、マッサージ店、脱毛サロンの従事者をつけ加えて作成
【識者PROFILE】
◎KARADA内科クリニック 佐藤昭裕院長