動物写真家・前川貴行さんの写真集『生き物たちの地球1』。23の生き物たちを目の前で楽しむことができ、まるで世界の旅に出かけた気分を味わえます。(清田哲)
子どもたちの心にひびく写真集を
フリーのカメラマンとして、世界中の野生の動物たちをレンズでねらいつづけてきておよそ20年。これまでに20冊近くの写真集などの書籍を出してきましたが、子ども向けに写真集を出すのは初めてです。
「子どもが対象だからといって力をぬかずに、デザイン、紙の質、写真の色、すみずみまでこだわりました。写真集はいつまでも手元に残る作品集です。子どもたちの心にひびく写真集ができました」と胸を張ります。
写真集には、アフリカのマウンテンゴリラ、インドのベンガルトラ、アメリカのハクトウワシなど、23の生き物が収められています。撮影中の舞台裏のエピソードなどを合わせて、調べ学習などにも役立つ解説もそえられています。
写真を見たり、苦労話を読んだりしていると、いっしょに前川さんと撮影現場にいる気持ちになります。「撮影を重ねていくうちに、『こんなテーマなら写真集になるかな』などと想像をふくらませていきます。集大成として写真集を出すのも、写真家としての大切な仕事です」
撮影するときはほとんどが1人で、長時間、自然や生き物と向き合います。逆に本になるまでには多くの人たちが関わります。デザイナーや印刷会社で色を調整するプリンティングディレクターらも協力しました。
特に力を注いだのは写真の色です。印刷工場の現場では、一ページ一ページ仕上がりの色を細かくチェック。その時間は2日間で合計26時間にも及びました。
「例えば動物の顔の色が少しちがうだけで、写真全体のイメージも大きく変わります」と前川さん。
表紙のオランウータンの親子写真もこだわりました。「親子の優しい間柄が伝わるように、暖かみの色が出るように調整をお願いしました。写真の魅力を引き出すのも大切な仕事です」
写真集にはこんなメッセージもそえました。
「この地球にはさまざまな生き物たちがすんでいて、みな僕たちの兄弟姉妹であり、ともに生きる大切な仲間です。まだまだ知らない仲間もたくさんいます。未知なる仲間たちとの出会いを楽しみに、これからも世界の旅を続けていきます」
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前川貴行 1969年、東京都生まれ。エンジニアとしてコンピューター関連の会社で働いた後、26歳のころから独学で写真を始める。97年から動物写真家の田中光常さんの助手をつとめ、2000年からフリーの動物写真家として活動を開始。08年に日本写真協会賞新人賞、13年には第1回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリを受賞。
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