片足を上げて立つ姿が特徴的な仏像「木造六字尊立像(ろくじそんりゅうぞう)」(高松市指定有形文化財)の修繕作業が完了し、所蔵する同市多肥上町の円成庵(えんじょうあん)で28日、お披露目された。修繕のため1年間ほど庵を“留守”にしており、地元の住民ら約30人が帰りを喜んだ。
市文化財課によると、六字尊は六字明王とも呼ばれ、密教で崇拝される仏。円成庵の仏像は腕が6本あり、右足の膝を後ろに曲げて、左足1本で立っている。ヒノキ材の寄せ木造りで、六字尊の仏像としては現存最古の平安後期の作とみられる。
地元住民によると、仏像は太平洋戦争の後、進駐軍に接収されないように全身を黒塗りにした上で、扉の奥に隠された。現在も開帳は毎年1、4、8月の計3日間だけという。
修繕作業は昨年5月から滋賀県内の修理所で実施され、仏像を分解して黒い塗料を落とし、傷んだ箇所を修復した。装身具や光背も往年の光沢を取り戻した。
仏像は、この日の午後に元の場所に安置された。覆いが取れて仏像の姿が現れると、住民らは「お帰りなさい」「本当にきれいになった」と声を上げ、感慨深そうに眺めたり、記念撮影したりしていた。
修繕作業に当たった修理所の高橋利明所長(69)も訪れ、住民らに「建造当時の木材がかなり多く残っていた」などと説明した。円成庵の清掃などをしている同市太田上町の大井千恵子さん(75)は「黒い塗料が取れて、優しいお顔になった」と話し、住民総代の喜多克幸さん(75)は「観音さまは地元の誇り。これからも末永く守っていきたい」と目を細めた。
円成庵は同市番町の行徳院の所有で、普段の清掃やお供えは地元の多肥地区の住民らが行っている。修繕費には高松市などの補助金のほか、住民からの寄付も充てられた。同院の河西延彰住職(38)は「皆さんのまごころからの行動は大変貴重。心から感謝している」と話していた。
仏像の次回の開帳日は4月8日。5月19日の開眼法要でも見学できる。
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