中学入試で多くの学校が出題する時事問題。今春は、どのようなテーマがよく取り上げられたのでしょうか。全国の国立・私立中学70校あまりの入試問題をチェックし、出題の内容を調べました。(編集委員・大島淳一)
朝日小学生新聞では1月25日付の紙面で、1月に関西地区の学校などで実施した入試の時事問題を解説。今回は首都圏の学校を中心にみていきます。
世界遺産や首脳会談が頻出
よく取り上げられたテーマが世界遺産です。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎県、熊本県)がユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録されることが決まったというニュースを入り口にした出題がめだちました。
神奈川・慶応湘南藤沢中等部は特徴についての説明として「江戸時代以降におけるキリスト教との独特なかかわり方が評価され、教会などが世界遺産に登録された」を選択。東京・青山学院中等部は遺産の名称などをふせたうえで、構成資産がある都道府県の組み合わせとして「長崎県・熊本県」を選ばせ、構成資産の一つで現存する国内最古の教会として「大浦天主堂」も記述させました。
アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による初の米朝首脳会談、金委員長と韓国の文在寅大統領による南北首脳会談も頻出。東京・学習院中等科は米朝首脳会談が開催された国として「シンガポール」、東京・鴎友学園女子中は南北首脳会談がおこなわれた場所として「板門店」をそれぞれ答えさせました。
こうした動きに関連して東京・本郷中は核兵器を条約によって禁止するための努力が評価されて2017年にノーベル平和賞を受賞したNGO(非政府組織)の名称をアルファベットで問いました(ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーン)。
W杯から領土問題へ
ロシアで開催されたサッカーのワールドカップ(W杯)もよく出たテーマです。東京・城北中ではロシアや、日本代表が対戦したコロンビア、セネガル、ポーランド、ベルギーと日本とのかかわりなどを出題。日本とロシアとのあいだにある北方領土問題に関連して択捉島を通る緯度(北緯45度)や地図で示された北方領土の島の名称、ベルギーの首都ブリュッセルに本部がある欧州連合のアルファベットでの略称を問いました(EU)。
ポーランドのある市と日本の隠岐の島町(島根県)が友好関係にあることから、島根県の竹島について日本と領土をめぐる問題がある国として「韓国」も記述させました。
台風や「はやぶさ2」も
理科の時事問題でよく出たテーマの一つが台風。東京・駒場東邦中は台風の特徴や、台風がもたらす風や雨の特性などを説明したうえで、台風のもととなる雲として「積乱(雲)」を記述させたり、上陸した台風が急速におとろえる理由として「水蒸気の供給が絶たれ、地上との摩さつによりエネルギーが失われる」を選択させたりしました。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた探査機「はやぶさ2」に関連した問題を出したのが神奈川・浅野中。はやぶさ2が探査する小惑星の名称として「リュウグウ」を記述させました。
2018年のノーベル医学生理学賞に選ばれた「本庶佑」さんを取り上げる出題もめだち、名前はもちろん、業績(免疫をがんの治療に生かす手がかりを発見し、新しいタイプの治療薬の開発に結びついた)などを選択式で答える問題がありました。
外部リンク