三島理恵さん(36) フリー
ファンドレイザーは、「社会を変えようとしている人」や「困っている人」と「応援したい人」をつなぐ仕事をする人です。被災地での支援や子どもの貧困、高齢者の独り暮らしといった社会問題に取り組むNPO(民間非営利団体)や、資金が不足している大学の研究などに必要な支援を届ける縁の下の力持ちです。
支援と思い 必要な人につなぐ
団体職員として働くのが一般的ですが、三島さんは過去の業務経験を生かしフリーで活動しています。いま関わる団体の一つが、全国の子ども食堂のネットワークを支援するNPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」です。
子ども食堂は、子どもの貧困や孤食を背景に増えています。ボランティアによる運営では、資金や食材、場所などが足りないことがあります。一方で、「支援をしたくても方法がわからない人がたくさんいる」と三島さんは話します。
企業に子ども食堂の活動内容や必要とされている社会的背景を説明し、具体的な応援方法をアドバイスします。企業の事業に合わせて、支援方法を提案することもあります。支援により生まれた変化を企業に伝え、「やってよかった」と思ってもらうように行動するのも重要な仕事です。
ファンドレイザーは英語で「資金集め」という言葉が元になっていますが、仕事はそれだけにとどまりません。例えば、組織の立ち上げ時にビジョンやミッションを考え、寄付してくれた人に手紙やメールでお礼や事業の報告を送り、現場の案内もします。
寄付金とともに「思い」を受け取る仕事だからこそ、大切にするのは「信頼」です。「目立たない作業を誠実に積み重ねて、関係を築きます。寄付者から『温かいお便りをありがとう』『来年も寄付します』とお返事をいただいた時はうれしいですね」
ファンドレイザーは、寄付文化が定着している欧米では欠かせない存在です。日本でも「日本ファンドレイジング協会」が2012年に始めた資格制度を取得する人が1400人を超えるなど、関心は少しずつ高まっています。
「困難な状況になった時、だれかが助けてくれると信じられる社会にしていきたいです」と三島さんは話します。
(猪野元健)
ターニングポイント
高校1年の時にカナダに短期留学しました。ホームステイを受け入れている家庭に、重度の障がいのある子どもがいました。その子が障がいのない子と同じように家族や友だちと遊び、外で活動しているのを見て、日本では障がい者が社会にとけこんでいないと思いました。日本を見つめ直すきっかけになり、応援し合ったりわかちあったりする社会にしていく仕事に関心を持ちました。
仕事の極意
①誠実
寄付者に誠実に寄り添う。自分の気持ちも大事にする
②ときめき
自分の心から応援できる活動を支援する
③アップデート
社会の変化にアンテナをはり、今の価値観を疑う意識をもつ
外部リンク