朝日中高生新聞の読者特派員の「暗記」の取り組みについて紹介します。目で見て覚えるだけでなく、手や体を動かしたり、まわりの人に伝えたりと、いろいろな方法があります。自分自身の「経験」にすることが、記憶に結びつく例が多いようです。
(山田泉)
誰かを相手に「授業」を
Nさん(兵庫・高校1年)
どこまで自分の記憶に残せるか、どうしたら印象的か――。Nさんは、さまざまな暗記の方法を試しました。ノートにまとめる方法はあまり記憶に残らず、たくさんの問題集を解く方法は中途半端に終わり、何度も音読する方法は途中で飽きてしまい……。
何度も書いて覚えようとしたときは「写すことが『作業』になってしまい、写経のように心をととのえる効果しかありませんでした」。
試行錯誤を重ねて、たどりついたのが「先生になりきって説明する」という方法。激しく体を動かしたり、大きな声で説明したりして頭に刻み込むそうです。家族を相手に「授業」をすることもあるといいます。
Nさんの祖父母は教師をしていました。その影響で、Nさんは小さなころから「先生ごっこ」をしていました。中学生のころ、友達とテスト勉強をしているときに友達がわからないところを授業のように説明してみました。
すると、その内容を自分もよく覚えられました。「ひとりのときでも相手に説明するように取り組めば楽しいのでは」と思いつき、勉強法としてとり入れました。
歴史や地理、公民などは大きめの模造紙を壁にはり、黒板の前で先生が授業を展開するように説明していきます。何も知らない人が理解できるよう、歴史や公民なら「流れ」を図式化。地理なら簡単な地図を描きます。そのうえで説明する口調で重要な語句を加えていきます。その模造紙はテストが終わるまで、ポスターのようにはっておきます。
「語呂合わせ」もよく考えます。NASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙センターがあるヒューストンの地名を覚えるときは「ロケット飛んでヒュー、ストン」、西南戦争の年号(1877年)は南国のイメージがあるバナナと結びつけて「いゃ~、バナナ! バナナの大群と西郷隆盛が戦争をしていたらいやだな……」といった具合。
「自分でイメージして考える方が、調べたり誰かに聞いたりするより、しっくりくる」とNさん。「バスチーユ襲撃の日は○○さんの誕生日だから7月14日」など、友達のことをもりこむ場合もあるそうです。
物語なら流れつかめる
宝塚歌劇が好きで、メロディーをつけて語句を覚えることも。宝塚歌劇にはフランス革命を題材にした演目も多く、世界史などの事項を暗記するのに役立ちます。Nさんは「自分のなかでストーリーとして流れのある知識になる」と感じています。
「勉強のしかたは教科や内容によってかわり、正解はない。覚えた先に知識を活用する楽しさがあることを忘れずに暗記をしたいと思う」
経験や実生活とリンク
Kさん(埼玉・高校1年)
「目で見て、口に出して、手で書く」。これがKさんの基本的な暗記法です。理科の元素記号は、語呂合わせも利用。化学式は図を描き、電子の配置は手が覚えるまで何度も描きました。「自分が描く図や表は愛着がわき、何度も見たい気持ちになる」
自宅で食事をしている時間を利用することも。たとえば法律を覚えるとき、その法律と世の中の出来事をからめ、家族と話し合います。誰かとやりとりすることで「経験」になり、長い期間、記憶が残るといいます。
Kさんは鉄道や路線図が好きで、地名を覚えるときは路線図などと結びつけ、暗記の効果を高めます。「実生活のなかで経験として覚えられるしくみを自分でつくるとよい。遊び心をもって取り組むと楽しく覚えられるから」
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