『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
理由の追求が英語をおもしろくする
理解しながら英語を学ぶ例を、関先生にもうひとつ挙げてもらうぞ。
「中学1年生で、動詞には現在進行形になるものとならないものがあることを学びます。現在進行形にならない単語はたとえば、“ know”,“ like”,“ want” などがありますね。なぜなのか。
最初のうちは『これはなる、こっちはならない』と丸覚えしてもなんとかなりますが、高校あたりになるとたくさん単語が出てきて、覚えきれなくなってきます。
しかし、理由を知っていれば、混乱することはなくなりますよ。そこには明確なルールがあって、5秒で中断・再開が自在にできないものは進行形にならないのです。
“ know”,“ like”,“ want”の『知っている』『好き』『欲する』は、5秒以内にコロコロ変わったりしませんよね。5秒前は知っていたけれど、5秒後には知らなくなるということはありません。
私はこれを『5秒ルール』と言っています。ルールの存在をいちど覚えてしまえば、一生使える技となりますよ。
英語学習の世界では理由なんてない、英語ではそうなっているので覚えましょう、という教え方が主流になってしまっていましたが、それではやる気も失せてしまいますよね。
理由を追求していくことで、英語の学問としてのおもしろさにも気づいていけるはずです」
大学が求めるのは文献が読める人
丸暗記ではない英語学習、ぜひ心がけたいところだ。同時に気になるのは、2020年の教育改革だ。
四技能の習得が唱えられるなど、英語科目で最も大きな変化が訪れるようにいわれているが、「丸暗記じゃない英語」を学べば教育改革を乗り切れるのかどうか。
「教育改革があるからといって、学習者が振り回される必要はありません。これまでと変わらず、丸暗記ではない英語学習を進めましょう。
世間では、受験にスピーキングまで取り入れられるのなら、なにかしら対策をしなければという風潮があるのはわかります。それでもやはり従来通り、とくに英文法と英文解釈に力を入れて受験勉強をするべきなのです。
大きな理由はふたつあります。
まず、大学受験の問題をつくるのは大学の先生だからです。先生方は正直なところ、自分の研究室できちんと研究できる学生が欲しいに決まっています。
流暢に英会話ができれば越したことはありませんが、それ以前に英語の文献をしっかり読めて、研究をみずから進めていける能力のあることが大前提。
難関大学になるほど、そうした先生方の本音の意向は、受験の問題に強く反映される傾向にあります。
それにもうひとつ。そもそも話すにしろ聞くにしろ、英文法や英文解釈の土台がないと無理なのです。きちんと英語を話せない人というのは、まずもって文法がわかっていません。
文法なんて実社会では役に立たないというのは俗説です。私たちが日本語を話すときを考えてもわかりますが、基本的にみんな文法にのっとって話をしています。単に文法用語などを意識しているだけで、「昨日、ハンバーガーは私を食べるでしょう」といった、文法的にメチャクチャなことは言わないはずです。
もちろん多少はくだけた英語になっているにしろ、基本的には文法にのっとっていなければ話が通じないでしょう。
とりわけビジネスの現場では、正しい文法を使って話すことが信頼を得るカギです。ネイティブの人たちは、発音よりも文法がしっかりしているかどうかを、信頼に足る人間かどうかのバロメータにしていますよ。
リスニングについては、その力を伸ばすには英文解釈を強化するにかぎります。文章として読み取れないもの、意味がとれないものを、聞き取ることなどできるはずもないのです。
教育改革、四技能といった仰々しい言葉に振り回されることなく、地に足をつけてしっかり理解しながら、英語を学んでいってほしいと思います」
関正生 1975年7月3日、東京都生まれ。スタディサプリ・英語講師。埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学文学部(英米文学)を経て、塾講師に。TOEICⓇL&Rテスト990点満点取得。英語参考書や語学書の執筆も手がけ、著書は、『子どもの英語力は家で伸ばす』(かんき出版)など70冊以上にのぼる。モットーは「英語に丸暗記はいらない」。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
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