2020年度からの大学入試改革を見すえた動きが、中学入試にもあらわれているようです。知識はもちろん、自分の考えを相手に伝えたり、まわりとコミュニケーションをはかったりする力を評価する入試が増えつつあります。どのような出題がみられるのでしょうか。ここ数年をふり返ってみました。 執筆・今里真(Z会 幼小事業部)
初見の出題にどう対応するか
私立中や国立中、公立中高一貫校で入試(適性検査)がおこなわれる一番の理由は「学校の教育理念に合う生徒を見きわめる」ことにあります。「大勢の志願者を適正な人数にしぼる」ことも目的の一つですが、入学後を考えると受験生にとっても教育理念と照らし合わせることは意味があるのではないでしょうか。とくに私立中の場合、各校の理念や校風に合う問題が入試で出題されがちです。
東京・武蔵中では、ねじやファスナーといった小物が入ったふくろが配られ、受験生がさわったり観察したりして、わかったことを書かせる問題が毎年のように出題されています。先日おこなわれた2019年度の入試では紙テープを折ってつくった「しおり」が配られました。
東京・麻布中では以前、みなさんにもおなじみのキャラクターが題材になりました。答えを導く手がかりを示したうえで「ドラえもんが生物として認められることがない理由」を記述式で答えさせたのです。いずれの出題も、はじめて目にするものに対する深い洞察力があるか、自分が考えた内容を正確に相手に伝えられるかなどが問われました。
こうした力はもちろん、ほかの人と協力して取り組むコミュニケーションの能力や創造性なども、これからの大学入試で重視されます。いまの大学入試センター試験にかわり、20年度から実施される大学入学共通テストでは、自分の考えを他者に伝えたり、図や資料から新たな結論を導き出したりする問題がもりこまれる見こみです。
適性検査タイプが増加の傾向
中学入試でも、大学入試で求められる力が変化することを「先取り」したような問題が増えつつあるようです。前年度の入試をふり返ると、東京・開成中は国語で「弁当の販売実績にかんするグラフを読み取り、社長の考え方を記述する問題」、兵庫・灘中では算数で、ある規則にそった数について「理由を『~から』に結びつくように書く問題」を、それぞれ出題。こうした問題は今後、各校に広がることが予想されます。
ここ数年の動きをみると、公立中高一貫校の適性検査に似た入試をおこなう私立中も増加。「思考型」「自己アピール型」といった名前がつけられ、首都圏だけで約150校が実施しており、東京・聖学院中では自分の考えをブロック(レゴ)であらわし、説明するという問題もありました。
「英語」をとり入れる入試も広がっています。募集人数がそう多くなく、英検1~3級レベルを求めるなど難易度が高めの試験がめだちますが、たとえば4月に開校する公立中高一貫校のさいたま市立大宮国際中等教育学校は英語の適性検査が必須です。
大学入試改革でも英語の「あり方」が大きく見直されることから、英語をとり入れる中学入試や適性検査も増えていきそうです。
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