「お父さんにぼう力を受けています」――。千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛さんが自宅で亡くなった事件では、心愛さんが大人に助けを求めていたのに、命が守られませんでした=メモ参照。それでも専門家は、「暴力を受けている子どもがいれば、SOSを出すことをためらわないでほしい」とうったえます。(近藤理恵)
虐待から逃れたケースも
長年、虐待などに苦しむ子どもを助ける活動をしてきた弁護士の坪井節子さんは「心愛さんは、勇気をふりしぼってSOSを出した。それなのに、大人たちは命を守ることができなかった」と、強い口調で批判します。「私たち大人は、二度と同じことが起きないようにする。だから、もし、暴力で苦しんでいる子がいれば、助けを求めることをためらわないでほしい」
坪井さんは、虐待などで安全に暮らせない子どもたちの緊急避難場所「カリヨン子どもセンター」(東京都文京区)の理事長を務めています。
カリヨンに自分で電話してくる子もいますが、多くはだれかしら大人に助けを求め、その大人が逃げ場を探した末にたどり着いています。坪井さんは「学校の先生や、友だちの親、スクールカウンセラーなどにSOSを出した結果、虐待から逃れられたケースもたくさんあります」と言います。
助けを求めるといっても、小学生の場合、親から暴力を受けても、虐待だと理解できていないケースも多いそうです。
虐待を大きく分けると、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待の四つです=イラスト参照。身体的虐待は暴力のほか、いすにしばりつけるなどが当てはまります。心理的虐待は、言葉でおどす、無視するなどです。ネグレクトは、ごはんをあたえないなどの「育児の放棄」です。性的虐待は、無理やり性器や胸をさわるなどいやな思いをさせることが当てはまります。
「自分が悪い子…」はちがう
坪井さんは「両親であっても、子どもに暴力をふるうなどは絶対にしてはならないこと」と強調します。「『自分が悪い子だから(暴力も)しょうがないんだ』と思ってしまう子が多いのですが、それは全くちがいます。みなさんはだれからも身体的、心理的な暴力を受けてはいけないという『権利』がある」
だれかから傷つけられていると感じたら、大人に助けを求めましょう。「交番にかけこんでも、110番通報してもいい。もし、一人の大人が受け止められなくても、あきらめずに助けを求め続けてください。あなたの命を助けたいと思っている大人は必ずいます」
【おもな相談先】
どこも相談は無料。話した内容の秘密は守ります。
子どもの人権110番
0120・007・110(月~金曜日の午前8時半~午後5時15分) 法務局の職員や人権擁護(ようご)委員が悩みを聞きます。
東京弁護士会 子どもの人権110番
03・3503・0110(月~金曜日の午後1時半~4時半、午後5~8時、土曜日の午後1~4時)
大阪弁護士会 子ども何でも相談
06・6364・6251(毎週水曜日午後3~5時、毎月第2木曜日午後6~8時)
弁護士会はどちらも弁護士が、いじめや虐待などの相談にのります。
児童相談所全国共通ダイヤル
番号「189」にかけると、近くの児童相談所につながります。24時間対応。
【千葉県野田市の小4女児死亡事件】
千葉県野田市で1月24日、栗原心愛さん(小4)が自宅の浴室で亡くなりました。両親がどちらも傷害の容疑で逮捕されています。
この問題をめぐり、心愛さんが学校に父親の虐待をうったえたアンケートのコピーが父親にわたされたり、父親が心愛さんに書かせた「お父さんにたたかれたのはうそ」という書面を見せられた児童相談所が自宅にもどす決定をしたりしたことなどが明らかになりました。
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