アメリカ航空宇宙局(NASA)職員 NASAジェット推進研究所(JPL)所属 大丸拓郎さん
NASAは、アメリカ(米国)の宇宙開発を進める機関です。研究所などが米国内に10以上あり、約8万人の職員が働いています。その一つで大丸さんが所属するジェット推進研究所(JPL)は、無人での宇宙探査ミッションを担当。
太陽系のすべての惑星に探査機を送りこんだ、世界でただ一つの機関です。約6千人の職員のうち、10人ほどが日本人です。
現在は、2020年に打ち上げ予定の火星ローバー(探査車)「マーズ2020」の開発に関わり、岩石などのサンプルを取るシステムづくりに参加しています。火星の平均気温はマイナス80度と、とても寒い環境です。
システムがこわれないよう、石などをつかむロボットアーム周りの設計をしています。NASAは将来的にはサンプルを地球に持ち帰ることも考え、動き始めています。
火星ローバーのほかにも、海があるといわれる木星の衛星「エウロパ」に向かう探査機の開発や、よりきびしい温度環境にたえられる探査機の開発にもたずさわっています。
【やりがいや苦労】
人類の英知広がることに喜び
大学院生だった2012年、NASAの探査車「キュリオシティ」の火星着陸のニュースを見ました。「ぼくもここに行きたい」という思いから、キュリオシティを作ったジェット推進研究所をめざしました。
国や文化のちがう仲間とのコミュニケーションに苦労することもありますが、大丸さんは「自分が作った探査機が、人類で初めて地球外生命体を発見したり、目にしたことのない風景を見られたりするかもしれません。人類の知的・物理的な境界が広がっていくところにやりがいを感じています」。
【あゆみ】
1989年 秋田県大館市生まれ
2002年 秋田県大館市立城南(じょうなん)小学校を卒業
2008年 秋田県立大館鳳鳴高校を卒業し、東北大学工学部機械知能・航空工学科に進学。その後、大学院に進む
2016年 NASAでの職業体験中に実力が認められ、17年から職員として働く
小学生時代から算数・数学や物理、化学が得意で、ものづくりに興味があったため大学は工学部に進学。宇宙に関わる仕事につくため、NASAを意識するようになりました。でも、留学経験もなければ、知り合いもいません。
大学院に進み、毎日朝から深夜まで研究し、学会で発表しては論文をまとめました。留学経験のなさを補おうと、JPLの技術者と交流を続けるなどしました。2016年の冬、JPLで2か月のインターン(職業体験)をするチャンスを得ました。
研究に集中し、自分にできることをし続けた結果、「君にオファー(仕事の依頼)を出したい」という言葉をもらうことができたそうです。
【朝日小学生新聞読者からの質問】
Q:NASAで働くために、何を大切にすればいいですか?
A:まずは自分の目の前にある、今やるべきことに集中しましょう!そのくり返しで、夢への道はおのずと開けます。
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