伊集院静さんの同名小説が原作の映画「駅までの道をおしえて」で、主人公の少女サヤカの母親を演じた。サヤカと、息子に先立たれた老人フセの交流を描いた作品。大切な存在との「別れ」という切ないテーマを描くが、サヤカとフセが互いの悲しみを分かち合い、絆を深めていく様子は新たな希望を与えてくれる。
愛犬ルーとの別れを受け入れられずにいるサヤカを優しく見守る、という役どころ。「本当はサヤカにいろいろ聞きたいと思うんです。でも、サヤカを信用して見守っている。その姿勢は私自身も見習いたいと思いました」。人との「ちょうどいい距離感」は、相手を信じて尊重することから生まれるのではないかと考える。
フセ老人は、亡くなった息子との再会を強く望む。「もう一度会いたい」と思う存在をたずねると、演出家の久世光彦さん(故人)をあげた。「久世さんからは本当にたくさんのことを学びました。『台本に書かれていないことを想像するのは、俳優の仕事で大切なことだから、続けていきなさい』という言葉が印象に残っています。今も俳優をするうえで大切にしていることです」
高校生の時、雑誌「Olive」を読んで、フランスの俳優シャルロット・ゲンズブールさんに憧れた。短大に進学すると本格的に俳優をめざした。「当時は『私は絶対にできる』という自信がありました。振り返ると、なんであんなに自信があったのか不思議なんです」と笑う。「いつかは夢をあきらめなければならない時も来るかもしれない。でも、力尽きるまで、くさらないでがんばろう、と思っていました」
中高生にもエールを送る。「やりたいことがあれば自信を持って、どんどん挑戦してください。思い通りにならないこともあるかもしれません。それでもポジティブにがんばることが、夢を呼び寄せるヒントだと思います」
中高生のみなさんにおすすめの本が『立川談志遺言大全集』です。故・立川談志さんが書いた落語集ですが、小説を読むようなおもしろさがあります。落語に興味を持ち始めたら、ぜひ読んでほしいですね。
1970年5月17日生まれ、東京都出身。主な出演作に映画「中学生円山」「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」など。映画「駅までの道をおしえて」は公開中。(文・近藤理恵、写真・品田裕美)
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