文部科学省は7月31日、全国の小学6年生と中学3年生が4月18日に受けた全国学力調査の結果を公表しました。今回から、主に知識を問う「A問題」と知識を活用して答える「B問題」を一体的に問う方式になりました。前回に続いて「活用する力」が課題となっています。
(猪野元健、近藤理恵)
知識と活用を一体的に問う形
調査は12回目です。国公私立学校の小学6年生計約104万人が参加し、国語と算数がありました。
2020年度から全面的に導入される新学習指導要領で、知識の力と活用する力を関連させて学ぶ力が重視されるため、学力調査でも知識と活用を分けずに一体的に問う方式になりました。
全国の平均正答率は国語は64・0%、算数は66・7%でした。課題となったのは活用力です。
国語では「公衆電話について調べたことを報告する文章」で空欄になっている部分を、40字から70字以内でふさわしい内容で書かせる問題が、正答率28・9%にとどまりました。報告の文章から自分の考えの理由をはっきりさせて、まとめて書くことにつまずきました。
算数では、ある市の1人あたりの水の使用量について、「市全体の水の使用量」と「市の人口」の二つのグラフからわかることを四つの選択肢から選び、その判断理由を書く問題の正答率が52・3%でした。二つのグラフを組み合わせることに、苦手意識を持った人がいたといいます。
中学では初の英語
中学3年は、国語、数学に加えて、初めて英語も出題されました。英語は筆記問題の「聞く・読む・書く」と、学校のパソコンを使う「話す」の四つの力が問われました。「話す」調査では、参加した92万7196人(9489校)の生徒のうち1・6%にあたる1万5298人(1658校)の音声データの正確な聞き取りができず、採点できませんでした。調査に使ったパソコンのトラブルなどが原因とみられ、文部科学省は対策を考えます。
論理的思考力きたえる訓練を
調査結果から、算数でも国語でも、「示された情報を元に、自分の考えの理由を明らかにして、まとめて書くこと」が課題としてあげられました。
大学入試の国語(現代文)の講師として問題を「論理」で解く方法を広める出口汪さんは、「すじみちを立てて考え、理解し、表現する『論理力』が求められる問題」と言います。
2020年度に始まる新しい大学入学共通テストでも、複数の資料から自分の考えを答えさせる問題が増えると考えられます。「論理力は、全ての教科の基礎になるもので、今後ますます求められる機会は増えるでしょう」と出口さん。
一方で、「論理力は、訓練しないと身につけることが難しい」と言います。「文章を読むときは、自分の感覚で読むのではなく、作者の立てた『すじみち』を読まなければなりません。読書をしたからといって、論理的に考えられるようになるわけではありません」
ただ、実生活でも、論理力を身につける手段はあります。「『いやな気持ち』『うれしい気持ち』など、自分の気持ちを他の人に理解してもらうために、『なぜそう思ったのか』と、言葉に表現するくせをつけましょう」と出口さん。
「『言わなくてもわかってくれるだろう』と思わずに、自分の考えを伝えることは論理的思考力をきたえる訓練になります」
外部リンク