東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=を虐待し死なせたとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた父親雄大被告(34)の裁判員裁判で、東京地裁は15日、「苛烈な食事制限と常習的な暴行を主導した」として懲役13年の判決を言い渡した。
守下実裁判長は「同種事案で最も重い部類」と指摘。検察側の求刑懲役18年に対しては「従来の量刑傾向から踏み出した重い求刑だ。虐待のひどさが社会の耳目を集めたことを踏まえても、最も重い部類を超えた刑を科すべき根拠は見いだせない」と判断した。弁護側は懲役9年が相当と主張していた。
守下裁判長は判決理由で、一連の虐待を「しつけという観点から懸け離れ、自らの感情に任せた理不尽なものだった」と厳しく批判。虐待の発覚を恐れて病院に連れて行かなかった点も「身勝手な保身目的で、生存確保への思いは二の次だった」と非難し「結愛ちゃんの苦痛、悲しみ、絶望感は察するに余りある」と述べた。
結愛ちゃんが危険な状態にあると認識した時期を、弁護側は死亡前日の昨年3月1日ごろと主張したが、経緯を踏まえて昨年2月27日ごろだったとして退けた。
判決後に記者会見した裁判員からは「許せないという感情的な部分と、過去の量刑傾向とのバランスを取るのが難しかった」といった声が出た。
判決によると、昨年1月下旬から、結愛ちゃんに十分な食事を与えず、顔を殴るなど虐待。極度に衰弱しても医療措置を受けさせず、昨年3月2日に死亡させた。
食事制限で結愛ちゃんは1カ月余りの間に体重の約25%を失い、異常な痩せ方をしていたと指摘。昨年2月24~26日ごろには、雄大被告が風呂場で馬乗りになってシャワーで冷水をかけ、顔を多数回殴る暴行を加えたと認定した。
結愛ちゃんは亡くなる前、ノート片やメモ紙に「ゆるしてください おねがいします」などとつづっていた。
元妻優里被告(27)を懲役8年(控訴)とした9月の判決は、雄大被告の心理的ドメスティックバイオレンス(DV)を認めた上で「優里被告は暴行を知りながら、容認した」としていた。
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