【LINEの逆襲】1年前倒しで成長中、LINE Payが分析「日本のキャッシュレスの今」

長福久弘氏

LINE Pay取締役COOの長福久弘氏。日本のキャッシュレス元年とも言える2018年を振り返る。

撮影:林佑樹

NTTドコモの新決済サービス「d払い」の参入や、PayPayの100億円還元の大ブームとその後の騒動など、2018年は日本がキャッシュレス社会へと大きな1歩を踏み出した年と言える。

中でもLINEのスマートフォン決済サービス「LINE Pay」は、2018年に大きく進歩した。LINE Payは2018年6月に「決済革命」を掲げ、キャッシュレス社会に関わるさまざまな取り組みを実施。抜粋すると主な内容は以下のようになる。

  • 2019年7月31日まで、QRコード決済のポイント還元率を3%上乗せ
  • 中小規模店舗向けに、2021年7月31日までQRコード決済の決済手数料および導入費用を無料化
  • 3GやWi-Fiの通信モジュール搭載するQRコード表示対応「LINE Pay据置端末」を発表
  • LINE Pay残高をおサイフケータイ搭載Android端末向け「QUICPay+」で利用可能に
  • 2018年11月21日、LINE Pay(QRコード決済、QUICPay+)加盟店が100万店舗を突破
  • 「LINE Pay Global Alliance」を発表。同アライアンスに加盟する海外の決済サービスのユーザーは、日本版LINE Payの一部加盟店での決済が可能に(2019年以降)

PayPay

PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」は、明らかに日本のキャッシュレスを広げる“起爆剤”の1つとなった。

撮影:小林優多郎

もちろん、キャッシュレスにまつわる取り組みは、LINE Payだけではない。2018年中ではNTTドコモの「d払い」やウォレットアプリの「pring」、そして「PayPay」といった多彩なサービスがスタート。

とくに、PayPayはユーザーへの大規模還元キャンペーン不正利用問題などで、キャッシュレスの多様なメリット・デメリットを浮き彫りにした。

そんな2018年の日本のキャッシュレス社会を、LINE自身はどう見ているのか。LINE Pay取締役COOの長福久弘氏は「本当に激動の1年」だと振り返る。

時代がついに来た実感、PayPay効果でユーザー増

LINE Pay決済

LINE Payの「QRコード決済」。

撮影:小林優多郎

── LINE Payは2014年12月にスタートし、5年目です。2018年を振り返ってどんな年でしたか?

長福久弘 取締役COO(以下、長福):市場が月を追うごとに変わっていくのを肌で感じていました。スピード感としては、当初のスケジュールでは2019年末頃と想定していた状態に、現在(2018年12月)なっているぐらいです。

── 国内のキャッシュレス市場の成長が加速した契機は何だと思いますか?

長福:FinTechと言われる業界は、イノベーションが起きにくい場所という認識です。クレジットカードの歴史も50年ほどありますが、なかなか革命は起きませんでした。

そんな中で、ここまで成長が加速した大きな要因は、国がキャッシュレスに対して前向きな取り組みをしていることと、さまざまなプレイヤーが世に出てキャンペーンを打ち、ユーザーの関心が上がってきたことです。

ビックカメラ LINE Pay

ビックカメラグループもLINE Payに対応。2018年末、ビックカメラなどの店頭はPayPay推しからLINE Pay推しに一変していた。

撮影:小林優多郎

── 加盟店は100万店舗を突破しましたが、ユーザー数はどの程度になりますか?

長福:ユーザー数は公開している数では3000万ほどになります(2018年12月時点)。2017年のキャンペーンで獲得した数とあまり変わりませんが、その時の方々はスタンプやくじで集めたユーザーになるので、その内アクティブユーザーは数字は明かせませんが、かなり右肩上がりの状態です。

とくにここ1カ月間はすごい伸びです(編集部注:インタビューは2018年12月下旬に実施)。もちろん3%のポイント還元上乗せの効果もありますが、正直に言えばPayPayさんの影響ですね。我々もPayPayのキャンペーン終了後にキャンペーンを打ちましたが、(使われている)数字が今までと段違いに伸びています。

「キャッシュレス」や「QRコード決済」という言葉を街中で聞くようになり、私自身もキャッシュレスの時代が本当に来た、と実感しています。

他社には真似できない「LINE」という強み

LINE Pay Global Alliance

強力な訪日外国人向け施策となるだろう「LINE Pay Global Alliance」。

撮影:小林優多郎

── キャッシュレス業界では「敵は他社ではなく現金」とよく聞きます。そんな中で、LINE Payらしい戦い方とは?

長福:ユーザーとマーチャント(店舗)にどう革命を起こすか。ユーザーは深掘りすれば他にもありますが、まずはおトクなのかどうかで動きます。やはり、店舗側がどう変わるかが重要かと思います。

我々はLINE Pay Global Allianceを発表しました。今後の展開にはなりますが、国内でLINE Payを導入すれば日本、台湾、タイ、インドネシアのLINE Pay、韓国のNaver Pay、中国WeChat Payのユーザーが決済できるようになります。この広がりは我々だからできる強みです。

使える店が増えれば、ユーザー側も日常生活で使っていける。ユーザーは1回さえ使ってもらえれば、「便利だね」と使い続けてもらえると思います。

── 加盟店開拓の今後の戦略は?

長福:我々はアカウントとの連動が1番の強みです。今までは何らかのメディアに出稿をしないとユーザーを店舗に呼ぶことはできないかった。しかし、LINE Payでは決済自体がユーザーとつながる手段になる。公式アカウントとユーザ-がつながり、メッセージを配信できる。そのようなソリューションは、差別化というより我々にしかできないことですね。

ただ、店舗側からしてみれば別に決済手段を1つに絞る必要はないわけです。クレジットカードだってJCB、Visa、Mastercard、アメックスといった具合に複数のブランドが並ぶ店がほとんどです。できるものならすべての決済サービスに対応したい、というのが本音だと我々は考えています。

乱立する「●●Pay」の未来は……

LINE Pay 据置端末

ユーザーとしては決済サービスが多すぎて、混乱するケースも。

撮影:小林優多郎

── クレジットカードの国際ブランドのような共通化がQRコード決済にも起こるのでしょうか?

長福:中国は3、4年でQRコード決済が普及しましたが、ここ1年間でマルチペイメント(多様な決済手段を統合させること)が当たり前になっています。複数の決済サービスのQRコードを店頭に貼るのではなく、1つのコードを貼るだけだったり、それを読み込む端末が普及し始めています。

もっと進むと、決済で差別化するのではなく、テーブルオーダーみたいに自身で自然と支払いができる生活に変わります。中国はもうそこまで行ききっていますが、日本もそのうちなると思います。

今は「このサービスは別のサービスとこういう違いがあって、どこで使える」という話ばかりですが、あと2年ぐらいすれば、決済事業者も数社に絞られ、その数社で1つのQRコードや1つの端末で読み取れるようになっていくでしょう。

ユーザーは結局1つの決済サービスしか選びません。最後はユーザーがどれを選択するか。加盟店の数は今後も伸びていくでしょうが、今は創世記なので競っているようにも見えるが、だんだんとマルチペイメント化していくと思います。

LINE Pay通知

LINE Payは支払いが完了すると、公式アカウント「LINE ウォレット」からメッセージが送られてくる。

── 自然淘汰される中で、LINE Payが生き残れると考える理由はなんでしょうか?

長福:2014年からサービスを始めて積み重ねてきたことが今も生きています。

例えば、最近ではキャッシュレスのセキュリティーの問題が取り沙汰されていますが、我々はかなり前から使いにくいと言われていたぐらいセキュリティーを厳しく見てきたつもりです。

4年経って振り返ってみても、我々の基準はユーザーの目線で安心が担保されていたのだと自負しています。

あと、LINEで支払えばLINEで通知が届くという当たり前のことも、結構他社は真似できないはずです。一般の方はカードの明細の確認はなかなかされないと思いますので、かなり安心感は高いと思います。

2019年は「LINE Pay 2.0」に近づく1年に

長福氏

「決済革命」の次は「LINE Pay 2.0」の世界の実現を目指すという長福氏。

撮影:林佑樹

── 2019年はLINE Payにとって、どんな年になるでしょうか。

長福:2018年末の勢いのまま、ずっとキャッシュレスは広がっていくと思います。

2018年は大手企業を中心にご案内して、POSの改修時期を待つところ以外には入りきったという感覚でいます。なので、2019年は中小規模店舗や地方を含めたところを中心に開拓していきたい。

先日発表しましたが、北海道に新たな支店を設立しました。主要都市と言われるような場所のキャッシュレス化を進めます。

キャッシュレス全体の話で言えば、決して現金がQRコードに変わることがゴールではないと考えています。もっとソリューション的な展開も進めたいですし、その先にあるテーブルオーダーやデータを使ったセグメント配信などもチャレンジしていきたいです。

社内では「LINE Pay 2.0」と呼んでいますが、「キャッシュレスの導入はいかがですか?」じゃない世界にもう少し近づけていきたいです。

LINE経済圏

LINEが広げる主な各種サービス。種類によっては他社との協業や合弁会社の設立を行い、サービスを運営している(クリックすると画像を拡大して表示します)。

図版作成:さかいあい

(文・小林優多郎、佐藤茂 撮影・林佑樹、小林優多郎 図版作成・さかいあい)


次回、1月3日は2018年のLINE最大の発表だった「LINE Bank構想」について、みずほフィナンシャルグループ、オリエントコーポレーション専務執行役員を経て、LINE Financial社長に就任した齊藤哲彦氏に直撃します。

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