「有事の金」といわれ、株価下落時の資金逃避先として使われてきた金。2019年、その金の価格が高値を更新中です。なぜこんなに価格が上がっているのでしょうか。投資対象としての金の特徴と、具体的な投資方法を考えてみます。
金の価格がどんどん上がっている理由
NY金先物価格は、2019年9月4日に1トロイオンスあたり1,566米ドルを超え、年初来高値を更新しました。約1年前の2018年8月ごろにつけた直近の最安値(1トロイオンスあたり1,167米ドル)からは、34%もの上昇です。この調子でいくと、2011年9月につけた史上最高値の1,923米ドルも視野に入ってきます。
2019年9月にシティーグループが「今後2年で2,000米ドルを突破する」との予想を発表するなど、金に対しては強気の見方が優勢です。金の価格が上がっている大きな要因は、世界的な景気後退リスクの高まりと考えられます。なぜなら米中貿易協議の停滞や米国債の長短金利が逆転する「逆イールド」現象の発生などがあるからです。
世界景気の先行きが懸念されることで世界の株価は神経質な展開となっており、その一方で景気後退局面に強いとされてきた金が投資家から選ばれています。
金に投資する方法3例、手数料と注意すべき点
実際に金へ投資するにはいくつかの方法があります。
まず考えられるのが、金の販売会社からバー(のべ棒)やコインの形になった現物の金を買う方法です。しかし金の現物取引は1回の取引額が少ないと手数料の割合が高くなりがちです。例えば10gの取引なら、手数料だけで10%ほどかかることもあります。そのため一度に数百万円、数千万円単位で買う人でなければ、現物取引はあまり現実的ではありません。
金の販売会社のなかには、積み立てサービスを提供しているところもあります。毎月コツコツと一定額を積み立てておき、実物の金は会社側が保管してくれるというものです。金を少額から購入できるメリットがありますが、やはり手数料は割高といえるでしょう。
手数料を低く抑えたいのであれば、金を投資対象としたファンドやETF(上場投資信託)を利用する手があります。いずれも売買時に取引手数料、持っている間には信託報酬がかかりますが、現物取引よりは割安です。特にETFは証券会社によって10万円以下なら手数料無料で取引できるところもあるため、少額での金取引に適しています。なお個人型確定拠出年金(iDeCo)の投資対象に金ファンドがラインナップされていることもあるので、iDeCoに加入している人はそちらでの投資を検討するのもよいでしょう。
ただし金は現物、ファンド、ETFいずれの取引方法でも現金と違って利息が付いたり、それ自体が収益を生んだりするインカムゲインはありません。
金で得た売却益の税金はどうなる?
金を売却した場合の税金は、取引方法によって異なり、バーやコインなどの取引で得た利益は譲渡所得となり所得税がかかります。その際、所有期間が5年以内か5年超かで課税される税金の額が変わり、5年超保有してから売却したほうが税金は安いです。金ファンドや金ETFの取引で得た利益は、通常のファンドや株と同じように譲渡所得となります。
また税金を計算する場合は他の所得と分けて計算する「申告分離課税」の対象です。ただし証券会社で特定口座「源泉徴収あり」を選択している場合は、税金の計算や徴収を証券会社が代行してくれるので、確定申告の手間を省くことができます。
ポートフォリオに金を組み入れるメリットは?
金が安全資産だという理由は、希少性の高さです。錆びることなく何百年経っても輝きを保ち続ける金属の金は、有史以来、富の象徴として人々から愛されてきました。現在では電子部品の素材にも使われる貴重な資源です。これから採掘可能な金の埋蔵量は残り少なく限られた資源であることが金の価値を安定的なものにしています。
ポートフォリオに金を組み入れる最大のメリットは、リスク分散になること。金は「有事の金」ともいわれるように、経済や政治の混乱期に対する株やドルのリスクヘッジ先として買われてきた安全資産です。つまり金価格は株やドルと逆相関の値動きをすることが多いといえます。
株式や株式投資信託に投資しているもののパフォーマンスがイマイチという投資家は、金への投資も検討してみる余地があるのではないでしょうか。(提供:アセットONLINE)