2020年の年明け、お花見ができない春やマスクをした夏を迎えるとは誰が想像したことでしょう。コロナ禍によって私たちの生活は多くの変化を余儀なくされました。
働き方においても同様です。在宅勤務へのシフトや自宅待機、場合によっては雇止めや解雇などの厳しい状況に直面し、自身のキャリアについて考え直さざるを得ない、という方も少なくはなかったでしょう。
そもそも「キャリア」って?
「キャリア」という言葉の響きに、どんなイメージを持っていますか?
職務経歴や経験・実績など、「仕事」に関することを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、本来「キャリア」とは、仕事にとどまらず、その人の人生そのものを扱うことを意味しています。
私たちが何を大切にしてどんな人生を送りたいのか、また何を体験して何を実現したいのかということは人生全体に関わってくることだからです。
そこでキャリアを考える際には、次の3つの切り口で捉えていきます。
- 職業人として:組織の一員として、どのような経験を積み上げ、役割を果たし、仕事をしていくのか
- 社会人として:一社会人として、社会に対しどのような役割、貢献を果たしていくのか
- 一個人として:子供として、親として…パーソナルな存在として何をし、どんな役割を果たしていくのか
「キャリア=仕事」というイメージが強いのは、人生においてその多くの時間を「仕事」に費やしている方が多いからといえるでしょう。
コロナ禍が終息したとしても、働き方やビジネスのあり方が、「コロナ以前」の状態に戻るとは考え難いです。そんな今こそ、キャリアについて改めて考えてみる絶好の機会と考えられます。
先行き不透明な今こそ、立ち止まるチャンス
先々の予測ができない中にいると、知らないうちに焦ったり不安になったりということが起こりがちです。そんな時こそ、どんな状況が起こっても揺るがない自分自身の軸を作り上げることが大切であるといえるでしょう。
キャリアにおいても同じことがいえます。ただ変化の波に翻弄されるのではなく、自分が何を大切にしていくのかという軸づくりは欠かせません。
軸が明確であれば、「迷う」ではなく「選ぶ」ことができます。また、今現在、自分の思うようにいかなかったとしても、「自分が戻るべき立ち位置」を理解できているわけです。これらはキャリアを積み上げていくには欠かせない要素です。
自分の「持ち味」を整理する
キャリアを考える際に、これまでの自分を振り返り、経験してきたこと、強みなどの「持ち味」を整理することは、自分自身への理解をより深めるための大切なステップとなります。次の3つの側面から整理をすることで、自分の軸づくりや未来に向けたヒントを得ることにもつながるでしょう。
- 「身に付けた技能」:経験を通して自分のものになった技術や技能
- 「得意なこと、好きなこと」:やっていて楽しい、苦にならない、得意なこと、強み
- 「大切なこと」:これだけは譲れない、迷ったときはこれを思い出す、信念や指針など
「持ち味」の整理をする際によく陥りがちなのが、「大した経験もしてないし、強みなんてないし…」という自己否定的な考え方です。この視点では、特に「得意なこと、強み」に気が付きにくくなります。
仕事においては、これまでの担当業務を書き出し、そこで経験したこと、身に付けたスキルを書き出すことで、強みが整理されてくるでしょう。
Being(どうありたいか)とDoing(何をするか)
何をするのか、何を経験するのかという「Doing」は私たちにとって重要なことです。「Doing」は、組織内の所属部署や役割の範囲内で「やりたいこと」を掲げるような場合は、それほど難しくないでしょう。しかし、まったく経験のないチャレンジ領域や、部署を超えた「やりたいこと」には、しばしば制約がつきまといます。
そこでもう一つ大切にしたいことは、事を成しているときの自分がどうありたいか、という「Being」です。これは自分の価値観、そしてどんな仕事にも通じる概念でもあります。さらに、自分自身の軸となるものです。
例えば、「お客様に心から喜んでもらえるような関わりを目指す」というあり方は、職種を問わず自分が向き合える、いわば汎用的なテーマです。
「Being」は自分が大切している価値観ともいえます。その価値観に基づいて起こした行動は、たとえ他の人に理解されなかったとしても、自分自身のやっていることに納得感を生み出す結果につながります。
さいごに
キャリアを積み重ねていく中で、不平不満や自己否定感ばかりの体験が続いたら、人生に喜びは少ないでしょう。充実感や納得感が得られる体験を通じて自己成長ができる、そんなキャリアの成功こそ、喜びの大きい人生につながるのではないでしょうか。
長い人生、時には「とにかく今は働かなくては」という状況におかれることもあるでしょう。そこで、たとえ意にそぐわない仕事であっても、「いついつまで」と割り切って、その役割を引き受けてみませんか。
新たな学びが生まれるかもしれません。それもキャリアの一部と考えて取り組んでみることを、ひとつの発想として持っていただければと思います。