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LINEでは、こうしてます。

なぜLINEが検索事業をやるのか?(後編)

検索事業開始から約1年。LINE Searchは、今まさに大きな転換点を迎えています。今回、LINE Search=LINEの検索事業のことをもっと知っていただきたいという想いで前編・後編に分けてインタビューを行いました。

後編となる今回は、LINEが検索をやる意味にフォーカスしてお届けします。記事を読んでくださった皆様に、少しでも伝われば嬉しいです。

前編はこちら

日本最大の「接点」を持ち、差別化された「コンテンツ」を独占できる。

ーー個人的にですが、LINE上でいわゆる広義のインターネット検索を求めているユーザーは今そんなにいないのでは?と思っています。LINE上から、コンテンツや情報を検索するキッカケをどう提供するのか、ユーザーの動機づけや習慣化をするために何かが必要だと思うのですが、どう考えていますか。

島村

極論、ユーザーはそこにいいものが出てきたら使います。すごい一言ですけど(笑)。最終的にはコンテンツの勝負なんですよ。みんなが共感できる「こういう世界ができたらいいよね」という強いメッセージはすごく大事じゃないですか。それをしっかり作られなければいけないという話と、それを作っていく上で何があるべきなのか、それを達成するために必要なものは何なのかということに応える必要がある。私は大きく4つあると考えていて、それが「技術」、「経験」、「接点」、「コンテンツ」だと思っています。

まず「技術」を持っていないと勝てませんよねといったがあります。でもその技術に関していうと、韓国のNAVERで培われている検索技術の経験値とか技術があって、日本向けに全面的に支援するべくすごく強力な体制の準備をしています。そして、そもそも日本の開発組織においても、技術的なバックボーンやインフラ面だったり、しっかりと我々は持っていますよという部分が根底に一つありますね。

経験」という点ではNAVERには10年に渡って検索を作ってきた経験はあります。一方で日本の市場で見ると、そもそも日本にはエンジンがないし、実はそのレベルで経験している人は人材としては少ないんですよね。でも、私自身はポータルバブル時代からのネットの生き残りなので、Google以前の時代からも知っているし、昔の流れから情報検索の在り方を見てきた人たちが何人かはいて。今、日本で検索をやるならという経験・知見を少なからず持っている人たちがLINEに集まり始めていて、その点でもチャンスがうちにはあるんじゃないかと感じています

そしてこの中で一番難しいのは「接点」を取ることですよね。当然、どんなにコンテンツを集めてきても、どんなにそれをうまくプログラムしたとしても、結局接点がなければ使ってもらえないじゃないですか。ネイバージャパンが2009年に日本で検索事業を展開したときの一番つらかったポイントは、接点がなかったことなんですよ。頑張って良いエンジン、差別化するものを作っても、そもそもユーザーが使ってくれないから、なかなかその製品の良さを拡張できないというジレンマに陥っていた。

接点とコンテンツは結構ニアリーイコールなんですね。接点がないから使われることもなく、使われることもないから磨くこともできない、なので成長させることができない、となって技術とか経験とは無関係にうまくいかなかった。接点の拡大に努めたんだけど、名もなきスタートアップだったわけなので、とにかく接点が全然出なくて、コンテンツも集まらなくてうまくいかなかったという経験をして。結局接点がないとどうにもならないというところから生まれたものが「LINE」だったりもします。

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「LINE」ができたこと、コミュニケーションインフラと呼べるまでに成長・普及したことは、今回プロジェクトを本格的に始動している最大の要因だと思います。うちにはLINEがあるよと。とても大きな接点があるから、日本統一にチャレンジできるよねという。しっかりとした基盤があって、そこに技術とかデータとか武器が揃ってきて、志を持った武将が集まってくると、これは立派に戦えますよね。

Googleがこれだけ席巻していることで、すべてのWebページは「人」に読まれることよりも「Google」に読まれることを基準に設計されているんですよ。これと同じ感覚で、接点とコンテンツの関係はすごく深くて。接点が多く取れないということは、差別化されたコンテンツを獲得するための武器がすごく弱まるということなんですね。でも我々は全く何もないわけじゃなくて、LINEという大きい基盤の上でチャレンジできるという背景があるのが一つの大きい武器だと思います。

その大きい接点を持っているので、差別化したコンテンツを集めることができると思っているんですよね。さっき言ってくれた「LINEで検索を使うシーンはないのでは?」という問いについては、今の時点で「イメージできないじゃん」と、そしてもっと考えると、「ゼロから作り上げることができるのか」という問いも言えるはずです。なので、「LINE」を作ったんですよ。

つまり、まずいろんな人に接してもらうキッカケがない限り、どんなサービスもノーチャンスだということなんですよね。当時、接してもらうためにフォトアルバムサービスなどのいろんな企画を新規で考えて、検索を直接やるのではなくて、他に毎日触ってもらえるようなキッカケを作ろう、とにかくチャンスメイクしようとしていた。そういう流れの中で生まれて勝ち残ったのが「LINE」だったという話なんですよね。

あと「コンテンツ」のところでいうと、大きくは2つ。コンテンツの部分がGoogleとLINEの差の部分で、Googleはどこまでいってもコンテンツ自体のオーナーになるつもりはないんですよね。Googleはあくまで、より良いものを提案しますという立場なんですけど、我々が理想とするものは飛ばして終わりじゃなくて、その解になるもの自体も一緒に作り込んでいきたいし、コンテンツ自体も最適化していきたい。場合によっては買ってくることもするし、ユーザーからどんどん作ってもらうような仕組みづくりもやっていきたい。検索結果で得られるものが、他で得られないものになるという部分まで責任を持ちたいんですよ。

NAVERの韓国での成功は、最終的にはコンテンツの独占性で勝っていることだと思っています。NAVERの中で得られる口コミ系、ユーザーレポート系のコンテンツは他では手に入れることができないものになっている。明確にNAVERで調べる理由になっているわけです。だから、我々もその論法でコンテンツをつくることにも力を入れていきます。

理想の検索を徹底的にやれる場所がある。

ーー検索のメインフレームを立ち上げるにあたっては、今あるLINEの資産だけを頼りにするということではなく、その資産も使っていく。ということですよね?

島村

そうです。LINEの資産も活用するということです。ただ、この場合皆さんは、LINEがメッセンジャーアプリとして進化していく姿を、無意識のうちに期待すると思います。しかし、LINE Searchができることによって、LINEがメッセンジャーアプリとして、大きく生まれ変わるということではないと思っています。

LINEはメッセンジャーの役割をある種超えて、極論で言うと、友達との間での共有、相談の際、積極的に活用されるスーパーアシスタントのようになりたいんです。例えば、ある人が何かを食べたいと思った時、その人の好みを分かったうえで、「ここのラーメン屋がお勧めだよ」と的確に教えたり、この商品が欲しいなと思った時、「分かった。俺が全部いい感じに調べておくから」といって、いろいろな商品の特徴とかレビューを集めて、「これを買うといいよね」ということを分かりやすく示してくれる、などですね。

こんなふうに理想的な未来の姿を描くことによって、LINE Searchの目指す姿を描く方向もあると思っています。LINEを使っている中で、いつもだったら何かを知りたいと思った時、面倒臭いことをやって探していると思いますが、実際にLINE Searchを使えば、こんなに簡単に検索ができて、こんなにリッチな結果が返ってくる、という理想的な未来を示したいと考えています。自分で一個一個ページを見ながら比較する必要がない、あらゆるデータが全て連携され、全てがその1ページに整理された形で答えが返ってくる検索。私はそれを目指しています。

ーー制約なく自分たちが理想像を考えて描けるというところが価値で、既にある理想像を一緒に追うのではなく、根本的に理想像を考え直すということですか?

島村

根本的に考え直すというよりは、徹底的にやれる場所があるという感じに近いかな。検索は、簡単なインターフェースであることと、相談した瞬間にすごく役にたった、すごく網羅性があったという経験をさせることができれば評価されます。調べる手間が省かれていけばいくほど、便利な検索として想像しやすいと思うんですよ。

実は、NAVERが韓国で作っている検索サービスの特徴の一つは、コンテンツが直接的に露出することです。基本的にはクリックしてページを見にいくGoogleの検索が一般的なのですが、それとは異なる体験になります。例えば、ある人物を知りたいなと思ってNAVERで検索すると、その人物の出演作品とかがバーッと表示されます。そういえばこの作品に出演しているんだっけ、とその作品を押すと、その作品の他の出演者などの情報もその場で出てきます。これはユーザー参加型で作られているだけではなく、いろいろなデータを買って複合的に合成させたりすることで作られているのですが、何かを知りたいと思って検索したら、結果自体が答えとなるような進化をしているんですよ。

さらにNAVERがすごいのは、もともとCGMというかユーザーがレビューするコンテンツを韓国で一番多く集めている会社なんです。 Q&A、ブログ、2ちゃんねるのようなコミュニティーもナンバーワンなので、あることに対してみんながどう思っているのか、他の検索サービスよりも効率的に集められるんです。すごく情報が広がって、知ることの楽しさみたいなのを、ある種、日本でGoogleがやっていること以上に、ちょっと違う形で実現している事実があるんです。だから、韓国で独自に進化している検索文化というのは、具体的にイメージしやすい短期的な未来像であることは確かだと、私は思っています。

今後は、結果がよりグラフィカル、エモーショナルに、動画的に返ってくることが増えたり、質問が検索窓に言葉を入れたりすることだけではなくて、音声になったりするかもしれません。そういう検索の仕方も含めた改革が、短期的にも起こると思うんです。我々が作るサービス自体、そういう検索サービスをイメージされるといいと思います。

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LINEが目指す世界「CLOSING THE DISTANCE」とシンクする。

島村

これまでを振り返って、LINE Searchという表現に対し、「LINE」の中の下部機能として意識されることが本意じゃないと言ったじゃないですか。だけど、誤解してほしくないのは、LINEと袂を分かつ意味ではないということです。最終的にLINEが目指す未来に重なってくるんです。

ーーLINE Searchが挑戦していく中で目指しているものが、LINE自体がやりたいこととシンクして、最終的にLINE全体の進化につながるということですか?

島村

はい、結局、LINEが目指す世界ともシンクするんですよ。LINEにとどまらない大きい未来を目指しているけれど、そもそも未来という点でいうと、LINEの目指すべき世界なんです。

ーーいったんLINEに限らない挑戦をして、違うアプローチも取るけども、結局は同じ方向を見ていて、最終的には一緒に大きなことを実現したいということですか。

島村

そうですね。最初から「一緒に」ありきでは考えていなかったんですが、考え抜いたら同じゴールだったということです。LINEがあることが前提で、その中でできることから発想したんじゃなくて、その前提を排してそもそもあるべき姿を考えた結果、LINEの未来とも符合していたということですね。LINEはどんなふうになりたいの?と考えたとき、人と人とをつなげるだけじゃなくて、あらゆるものとつながってスマートポータルになりたいというビジョンがあるわけです。LINE Searchも最終的にはこのビジョンを共有している。考え抜いた結果、結局LINEに戻ってきたということです。

LINE Searchは「LINEという枠組みの中でとどめたくないんだよね」からスタートしますが、考え抜いて描いた未来が、結果、LINEが目指す姿であるスマートポータルとシンクしている。LINE Searchも、人や情報、コンテンツなどあらゆるものとユーザーがいつでも、どこでも、シームレスに繋がっていく世界の実現を目指していて、最終的にLINEがやりたいことを一緒に実現しましょうにつながっていく。

これまで私が話してきたことは、入りは違っても最終的にはLINEのスマートポータルというメッセージの主語でもあるんです。
これはまさにLINEが掲げるミッション「CLOSING THE DISTANCE」そのものなんだと思っています。

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桃木 耕太

2013年にLINEに中途で入社、今は開発組織と採用組織でWebサイト/コンテンツやイベントの企画/制作などをしてます。