映画人有志による「日本学術会議への人事介入に対する抗議声明」が、10月5日に発表された。
これは、日本学術会議によって推薦された新会員候補のうち6人の任命を、菅義偉首相が拒否したことに対するもの。抗議声明の中では、この問題が「学問の自由への挑戦」だけにとどまらず、「表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦」と指摘している。
声明を連名で発表した映画人は、青山真治(映画監督)、荒井晴彦(脚本家、映画監督)、井上淳一(脚本家、映画監督)、大島新(映画監督)、金子修介(映画監督)、小中和哉(映画監督)、小林三四郎(配給)、是枝裕和(映画監督)、佐伯俊道(脚本家、協同組合日本シナリオ作家協会理事長)、白石和彌(映画監督)、瀬々敬久(映画監督)、想田和弘(映画監督)、田辺隆史(プロデューサー)、塚本晋也(映画監督)、橋本佳子(プロデューサー)、古舘寬治(俳優)、馬奈木厳太郎(プロデューサー、弁護士)、三上智恵(映画監督)、森重晃(プロデューサー)、森達也(映画監督)、安岡卓治(プロデューサー)、綿井健陽(映画監督・ジャーナリスト)の22人。
日本学術会議への人事介入に対する抗議声明
除外された6人の候補者は、安保法制や共謀罪に異を唱えた学者たちです。今回の任命拒否は、会議の理念を踏みにじるだけでなく、「会議の自律性とそれによって守られる学問の自由への挑戦」であり「政府に批判的な研究者を狙い撃ちにし、学問の萎縮効果を狙ったとみられても仕方ない」(江藤祥平上智大学准教授)ものです。
内閣法制局は、安倍政権時代の2018年11月、同会議から推薦された人を「必ず任命する必要はない」ことを内閣府が示し、了承したことを認めています。その2年前2016年にも同会議の補充人事に難色を示し、3人の欠員が補充できませんでした。安倍政権がずっと狙っていたことを管政権が今回、ついに実行に移したのです。案の定、菅首相は「法に基づいて適切に対応した結果だ」と答え、加藤勝信官房長官も「政府として(任命除外の)判断をした。判断を変えることはない」という考えを示しました。菅政権は「説明責任」を果たさないこともまた継承したようです。また、菅首相は総裁選前のテレビ討論会で「政権の方向性に反対する官僚は異動」と公言していました。その矛先が学者、研究者に向けられたのです。次にその牙はどこに向けられるのでしょうか?
この問題は、学問の自由への侵害のみに止まりません。これは、表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦です。
ナチスが共産主義者を攻撃し始めたとき、私は声をあげなかった。なぜなら私は共産主義者ではなかったから。
次に社会民主主義者が投獄されたとき、私はやはり抗議しなかった。なぜなら私は社会民主主義者ではなかったから。
労働組合員たちが攻撃されたときも、私は沈黙していた。だって労働組合員ではなかったから。
そして彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる人は一人もいなかった。
マルティン・ニーメラー
2020年10月5日
青山真治
荒井晴彦
井上淳一
大島 新
金子修介
小中和哉
小林三四郎
是枝裕和
佐伯俊道
白石和彌
瀬々敬久
想田和弘
田辺隆史
塚本晋也
橋本佳子
古舘寬治
馬奈木厳太郎
三上智恵
森重晃
森達也
安岡卓治
綿井健陽