予約3年待ちと言われる広尾「長谷川稔」のシェフ、長谷川稔氏がプロデュースした焼肉店がオープンした、とのニュースが飛び込んできたのが今年初めのこと。
「長谷川稔」は「The Tabelog Award」のSilver受賞店です。当然、高級店かと思いきや、なんと飲み放題付きで6,000円というではないですか!
長谷川シェフのお墨付きなら質も味も確かなはず! これは行かねば損するお店に違いない、ということで、さっそく「幡ヶ谷の牛男ん家」に伺いました。
長谷川稔シェフが初プロデュースのチェーン店「〇〇の牛男ん家」
今年の1月に第1号店として荻窪にオープンしたばかりなのに、もうすでに幡ヶ谷に2店舗目が誕生していました。
聞けば毎月1店舗ずつ出店し、全国に50店舗展開していくそう。あの長谷川稔シェフがチェーン店を手がける? これはますますおもしろくなってきましたよ。
中へ入ってみるとまずありとあらゆるところに貼られた紙に驚かされます。
そこには、「おかわり禁止!!」「飲み物はすべてコップで飲むべし!!」などと約束事が書かれているのです。それもさることながら何か普通の焼肉店と様子が違うような……。
店内を見渡すとテーブルごとに冷蔵庫が1台設置されています! そうです、こちらは“セルフ焼肉店”なのです。
まずは、「店のコンセプト」「ルール」「禁止事項」「肉の焼き方」「ドリンク」について記載しているマニュアルをよく読むことが肝心です。なぜなら「マニュアルにあることはスタッフに聞かない」と壁に貼り紙が……。
それぞれのテーブルにはマークがついており、同じマークの冷蔵庫に入っている食材やドリンクをいただくスタイルです。
また、食材については追加が一切できません。と、断言されると本当に足りるのか不安にかられますが、ご心配なく!
肉はひとり350g、白飯はおひついっぱいに入っていて、カレーとスープは食べ放題。それに制限時間80分なので、むしろがんばって食べないと持ち帰ることになってしまうようです。
赤身も脂もホルモンも! A5ランクの近江牛に舌鼓
では、肉を焼いていきましょう。おいしさを逃さないよう真空パックされた肉はタン、レバー、ハツ、カルビ、イチボ、ランプ、ハラミ、リブロース、ホルモンなど厳選した部位を提供しています。
マニュアルにはそれぞれの焼き方、味わい方が書いてありますが、何から、どのように、何をつけて食べるかはすべて自由。せっかくなのでセルフ焼肉の醍醐味を楽しみましょう。
テーブルに設置されているのは、ヘルシーロースターという無煙無臭でダクト要らず、水冷却パイプアミは表面温度が100℃以下、よって焼き網の交換不要で汚れはウエットティッシュで軽く拭くだけ、さらに焼きムラもなく肉の余分な脂も落としてくれる魔法のような焼き台です。確かにこれはセルフ焼肉の強い味方に違いない!
カルビやイチボは焼く直前に醤油ダレをまとわせてから網の上に。焼けたらりんごダレをつけるのがマニュアルのオススメです。
A5ランクと言ってもギトギトした脂を一切感じることはなく、肉のうまみだけがしっかりと味わえます。
ご覧ください! この皿からはみ出しそうなほど大きいリブロースを。美しい脂の入り方を見れば、上質な肉というのが良くわかります。
ほおばった瞬間から溶けてしまうけれど、いつまでも噛んでいたくなる、そんなリブロースなのです。
調味料は秘伝の「醤油ダレ」と「りんごダレ」の他に、「塩胡椒の極み」「スパイスソルト」「ごま油」「レモン」が用意されています。“おいしい肉のお供においしい調味料”、味変も楽しめます。
飲み放題で人気なのが「0秒サワー」。グラスに好みのシロップと氷を入れてテーブルに設置されたサワーサーバーの蛇口をひねればあっという間にサワーができあがります。アルコールが足りなかったら冷蔵庫にある「キンミヤ」を追加して。
シロップは100種類以上の中からソムリエが厳選した12種類で、どれも気になるフレーバーばかり。いちばん人気は?と聞くと、何かに偏ることなく飲まれているとのこと。
ノンアルコールもこのシロップをソーダや水で割って飲む方がほとんどなのだそう。確かにこれだけあると全種類トライしてみたくなるものです。
飲み放題はサワーだけではありません。冷蔵庫には日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、カルピス、牛乳、トマトジュース、炭酸飲料、ウーロン茶、緑茶、飲むヨーグルトまで入っています。さらに言うと持ち込みも大歓迎とか。
良質な肉が低価格で食べられる訳
これだけ質の良い肉にカレーとスープは食べ放題、それに飲み放題が付いて6,000円(税抜)という価格をなぜ実現できたのでしょうか。
「やはり限界までセルフサービスを徹底しているからだと思います。スタッフは1名のみ、内装費はほとんどかけていません。お客さまにお願いすることが多く、店の形態もルール化しており、4名席と2名席が2つずつの計12名で1日3回転まで。おひとりさまは入れません。完全予約制で80分、緊急事態宣言中は17:45から15分刻みで予約を受け付けます。これは今後できる店舗も同様です」とのこと。
しかし、コスパが良いだけで人気店になれるものではありません。セルフ焼肉というスタイルでコストを限界まで削減し、現在リニューアル準備中である系列店の高級焼肉「牛男」と仕入れ先を同じにすることで、肉質と味にこだわり抜くことができたからなのです。
カレーもそのひとつ。長谷川シェフのレシピは15種類の特製スパイスに香味野菜をフォン・ド・ボーと鶏のだしで煮込み、牛乳と生クリーム、そしてジャガイモのペーストでコクがあるのにサラサラした、カレー専門店に負けるとも劣らない仕上がり。良質な肉は脂が甘く感じます。
これが食べ放題なんて、なんという贅沢の極みでしょうか! 冷蔵庫から食材を取り出して好きなように肉を焼き、好きなドリンクを作って飲む、そんなアットホームな空気感が心地良い。
みんなでマニュアルを見ながら焼き方を話すのも一興。焼肉の楽しみ方がまたひとつ増えました。
<店舗情報>
◆幡ヶ谷の牛男ん家
住所 : 東京都渋谷区幡ヶ谷2-48-2 hanabusaビル 2F
TEL : 050-5872-4046
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
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※本記事は取材日(2021年1月26日)時点の情報をもとに作成しています。
取材・文:高橋綾子
撮影:大谷次郎