2月3日の節分に食べると縁起が良いとされる「恵方巻き」。風習が全国に広がる一方で、近年は売れ残った商品が大量に捨てられることが問題になっています。農林水産省は11日、「求められる数に合う量を売って」と、業界の団体に呼びかけました。(寺村貴彰、小貫友里)
仕入れ予想難しく売れ残る
一般的に恵方巻きは、7種類の具をのりで包んだ巻きずしです。2月3日の節分に「恵方」という方角を向き、だまって食べ終えると縁起が良いとされます。恵方の方角は毎年変わり、2019年は東北東です。関西地方で生まれた風習ですが、1990年代後半に大手コンビニエンスストアが全国で取りあつかいを始めたのをきっかけに、広がったとされます。
2017、18年と大量に捨てられた恵方巻きの写真がツイッターなどのSNSで広がり、問題になりました。農水省は11日付で、「大切な食料資源をむだなく使う」ため、買われそうな数に合わせた販売をするよう、コンビニやスーパーなどが所属する団体に、文書で呼びかけました。
農水省の担当者は「『SDGs(持続可能な開発目標)』の考えが広まり、人々のむだに対する意識が高まってきました。関西で始まった大切な食文化を否定しないよう、早めに通知を出しました」と説明します。
恵方巻きで大きな問題になったのは、クリスマスケーキやおせち料理に比べ、予約をして買う人が少ないからでは、と考えられます。お店が数を予想しにくく、売れ残りが出やすいためです。すでにコンビニやスーパーなどは、予約した方が安く買えるような仕組みを取り入れ、対策にあたっています。
ただ、各社とも、前年を上回る数を売ろうと力を入れており、食品のむだ(食品ロス)をどれぐらい減らせるかはわかりません。恵方巻きがどれぐらい捨てられているかを示すデータもなく、過去と比べることも難しい状況です。
本当に食べたい人は予約を
スーパーやコンビニが大々的に売り出す恵方巻きやクリスマスケーキ、土用の丑の日のウナギなどは、どれも作られてから日持ちしない食品です。そのため、食品ロスが多く出る傾向があります。恵方巻きは卵や海産物を使いますが、生き物は特別な日に合わせ、突然たくさん生み出されるものではありません。
「命をささげるもの、運送会社、店頭で販売する人など、みんなに負荷がかかってしまう」と、食品ロス問題専門家の井出留美さんは言います。
食品ロスを出すことは、消費者の首をしめることにもなります。
恵方巻きは、大量に廃棄される可能性があることを見越し、廃棄の費用もふくんだ値段をつけています。
環境省によると、ごみ処理のために私たちのはらう税金から、年間約2兆円が使われています。捨てる量を減らせば、その分の税金が教育や福祉など、ほかに使えるようにもなります。井出さんは「食べたい人は予約をしましょう。ただ本当にその日に食べる必要があるのか、冷静になって考えてほしいです」と話します。
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