「2020年教育改革で、何が変わるのか」
「2020年、戦後最大規模の教育改革」というキャッチコピーを目にしたことはありませんか? AIの発達により現在の職業の半数は不要になる。だからこれからは単なる「知識や技能の習得」ではなく、「自分で考え、判断し、実際の社会で役立てる」ことが必要になる。そのために「主体的・対話的な深い学び」(アクティヴ・ラーニング)を基軸とした教育改革や大学入試改革が行われるというわけです。
とりあえず趣旨は理解できるとして、果たしてそれほど大きな改革に教育現場は対応していけるのでしょうか。新しい教育方法を実践するには、教師の技量と意欲、そして何よりも時間が必要です。しかし私が見聞する限り、小学校の先生方に時間的な余裕があるようにはみえませんし、文部科学省が掲げる「働き方改革」のための施策が「教職員1456人増・スクールサポートスタッフ600人増」では、焼け石に水。だから、先生たちがどれだけ頑張っても、おそらく教育現場には相当な混乱が生じるはずです。
一番心配なのは、「主体的・対話的な深い学び」がいずれ実現するとしても、その前提となる「基礎学力の定着のための教育」がきちんと行われるかどうかです。「自分で考え、判断し、役立てる」には、少なくとも漢字や語彙の習得と計算力が不可欠ですから。
すでに動き始めた大きな流れに対して、傍観者的な立場から批判しても、何も得られるものはありません。混乱する現場で苦闘する先生たちには、できる限りの協力とエールを送りながら、他方で「基礎学力の定着」に関しては、保護者自らがなんらかの「自衛策」を講じる必要があることを忘れないでください。
後藤卓也(ごとう・たくや)オリジナルテキストを使い、専任講師だけが教壇に立つことで知られる首都圏の難関中学受験名門「啓明舎」(さなるグループ)塾長。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。著書『秘伝の算数』『新しい教養のための理科』などは中学受験生のバイブルとなっている。
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