ダンスカンパニー「CHAiroiPLIN」(チャイロイプリン)主宰、「コンドルズ」メンバー
「コンテンポラリーダンス」は、表現方法に形式がない自由なダンスです。スズキさんはコンテンポラリーダンスのダンサーでもあり、自身のダンスカンパニー「CHAiroiPLIN」や他の演劇の舞台で振り付けを行う振付師でもあります。
9日から公演が始まった東宝主催のミュージカル「笑う男」でも振り付けを担当しています。「その場で考えるおもしろさを大切にしたい」というスズキさんは、どんな振り付けにするかは、事前にイメージを膨らませておくものの、「ノートに書いてかっちり固めたりはしない」と言います。
「自分の色」を出しつつも、現場の空気や意見をくみ取り、振り付けを提案していきます。「答えは無限にあるから、自分の意見にこだわる必要はありません。そして、注文に対してすぐに応えられるようにする『瞬発力』を大切にしています。それは、これまでの経験と蓄積によるものが大きい」
ダンスに出会ったのは大学生の時。ただ、ダンスのレッスンに参加することはほとんどありませんでした。その代わり、たくさんのダンスや演劇の舞台を見て、勉強しました。「公演を見て、『あの動きおもしろいな。じゃあ、どうやったらできるんだろう』と考えてきた経験が今につながっていると思います」
自分が「おもしろい」と感じる感覚を大切にしているスズキさん。常に「自分が何を楽しいと思うか」を意識しています。CHAiroiPLINでは、シェークスピアや太宰治の作品をモチーフにした、演劇や文学と融合したダンス公演も手がけています。演劇や文学作品に触れる時も「直感」を大切にして、自分が感じたおもしろさを観客にも伝わるように、動きや構成を考えています。
振付師のおもしろさは「答えがないものが、形になること」と言います。形になって、お客さんが反応してくれることがやりがいの一つです。「AIはたくさんの選択肢の中から答えを導き出します。でも、『0』から何か創ることはできないはず。『0』を『1』にできるのは人間だけ。膨大な『答え』があるのは、ダンスや振り付けの魅力です」
(近藤理恵)
ターニングポイント
高校生の時、演劇を初めて見て、まるで頭のネジが外れたような気持ちでした。保育士になるための専門学校に入学することも決まっていましたが、「演劇の道に進みたい」と思うほど、ものすごく感動しました。その感動した気持ちを疑わずに、演劇の道に進んだからこそ今があります。自分の気持ちを信じられたことは、とても大きな意味があったと感じています。
中高生へのメッセージ
一番大切なことは、自分にうそをつかずに、やりたいことをやることです。周りの目は気にしなくていい。もし、本当にやりたいことがなければ、自分と向き合って、好きなことは何か分析するといいと思います。
仕事の極意
①待たずに動く
待っていても、事は動かない。待たずに、自分から行動する
②否定せずに動く
否定するとストップしてしまう。相手の意見が違うときも否定をせず、自分の意見を乗せる
③考えないで動く
ダンスは感性を大切にするもの。あまり考えすぎない
スズキ拓朗さんのあゆみ
1985年、新潟県上越市生まれ
■小学校時代
バスケット、水泳、空手、サッカー、野球などさまざまなスポーツに取り組んだ
■注目浴びたかった中学校時代
「お調子者で、みんなの気を引くため、先生のものまねをしていました」
■初めて演劇を見た高校時代
新潟県立糸魚川高校に進学。3年の時、地元で演劇を初めて見て感動。保育士志望から演劇の道に進路変更
■2004年
桐朋学園芸術短期大学に入学。演劇を学ぶ。前学長で舞台演出家の故・蜷川幸雄さんから、「きみはダンスをやった方がいい」とすすめられ、ダンスの道に。蜷川さんの「見て、吸収しろ」という教えに従い、「とにかくコンテンポラリーダンスの公演を見に行って勉強しました」
■07年
CHAiroiPLIN立ち上げ。11年に「コンドルズ」参加
■15年
第9回日本ダンスフォーラム賞、第46回舞踊批評家協会新人賞受賞
外部リンク