【異能とは】つきぬけた才能を持つ人を「異能」と呼びます。異能を支援するため、ソフトバンクグループ代表の孫正義さんが「孫正義育英財団」を立ち上げました。財団生に選ばれた第2期生が夢中になる研究を紹介します。
第12回 筑波大学理工学群2年 田渕宏太朗(19歳)
ぼくは、中学3年生のときから「軸流ファン」の効率を上げる研究を行っています。軸流ファンとは、扇風機や換気扇のように、ファンの回転面に垂直に風が流れるタイプのファンのことです。
これまでのファンの効率を上げる研究は、ファンの羽根の枚数を増やしたり、羽根の形を変えたりすることに重点をおいていました。ぼくは、羽根の形を変えずに表面を加工し、まわりの流れをあやつることによって効率を上げることをめざしています。
高校2年生のとき、何も加工をしていないファンに対し、最大で32%効率を向上させる表面加工を発見しました。これを市販品のファンに応用し、12%効率を上げることにも成功しています。
この研究成果が「高校生科学技術チャレンジ(JSEC)2016」で認められ、17年にアメリカ(米国)・ロサンゼルスで開かれた「IntelISEF 2017」に日本代表として出場。機械工学部門で2等賞を受賞することができました。
受賞により、米マサチューセッツ工科大学などが設立したリンカーン研究所が、小惑星34030に「Tabuchi」という名前をつけてくれたほか、研究成果や可能性にもとづいてメンバーが選ばれる「SIGMAXi」の一員にもなることができました。
現在はこの研究を前に進め、高校時代には明らかにできなかった、表面加工がどのように流れを変化させ、効率をどう向上させるのか、ということを調べています。これによって、世の中で使われているさまざまなプロペラの効率向上と省エネルギーに貢献したいと考えています。
小学生のころから科学の実験が大好きでしたが、研究を本格的に始めたのは小学5年生のときでした。愛知・南山中学2年まではごみからバイオエタノールをつくる研究に取り組み、中学1年のときには全国学芸サイエンスコンクールの内閣総理大臣賞も受賞しました。
研究を続けてきたことで、日本中、そして海外にも友だちがたくさんでき、社会の第一線で活躍する研究者の方たちともつながることができました。よろこびもくやしさもたくさん経験してきましたが、そのすべてが、ぼくにとっては宝物です。
将来の夢は宇宙飛行士になることです。宇宙飛行士として国際的な宇宙開発に参加し、研究でつちかった知識と技術で人類の知見を広げたいと思っています。
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