2020年度から始まる大学入学共通テスト(21年1月の実施)に向けて、英語の「あり方」が大きく見直されています。実際の共通テストを想定し、出題の改善点などをさぐる「試行調査」から読み取れる点を挙げてみましょう。執筆・池田智史(Z会 中高事業部)
実際の場面に即した出題
試行調査の出題を見ると、いまの大学入試センター試験と、共通テストでは異なる点がいくつかあることに気がつきます。
センター試験では「筆記」と「リスニング」(=聞くこと)の二つが実施されていますが、試行調査では「筆記[リーディング]」と「リスニング」になりました。筆記に[リーディング](=読むこと)ともり込むなど、読む力を把握することに軸足が移っています。センター試験で出ている単語の発音や文法の知識を問う問題なども外されました。
出題の内容にも変化が見られます。センター試験の「筆記」ではエッセーや説明文、物語、広告などが読解問題でとり上げられています。一方、試行調査では実際の生活で英語を読む場面を強く意識しており、「授業の活動のために資料を読む」「複数の文章を比較して情報を読み取る」「文章のなかから事実と筆者の意見を見分ける」といった出題になりました。
「リスニング」の問題にも変化があらわれています。「大学で講義を聞いてメモを完成させる」「複数の人の意見を聞いて、それぞれの意見をとらえる」など、筆記と同じように実際に英語を聞く場面を想定したものや、情報を処理する力を必要とする問題がめだちました。
また、センター試験では英文はすべて2回読まれていますが、試行調査では一部の出題は1回。こうした点も、実際に英語を聞く場面に近い状況での力をはかるものといえそうです。
配点についても違いがあります。センター試験の場合、「筆記」が200点、「リスニング」が50点。共通テストでは4技能(リーディング、リスニング、スピーキング=話すこと、ライティング=書くこと)の力をバランスよく評価することをめざしていることから、試行調査でもこの考えに沿って「筆記」「リスニング」ともに100点でした。
話したり書いたり 発信技能が重要に
各大学が個別に実施する試験(2次試験)では、すでに新しい流れが出はじめています。たとえば京都大学。以前は「英文和訳」(英語を日本語にする問題)と「和文英訳」(日本語を英語にする問題)以外の出題はほとんどありませんでしたが、ここ数年、書く内容を受験生自身が考える「自由英作文」が出されるようになりました。東京外国語大学では、独自のスピーキング試験の開発を進めるなどしています。
みなさんが本格的に英語を学ぶようになると「音声」がより重視され、自由に話したり書いたりする「発信技能」も求められます。それらは入試にかかわらず、英語の能力として重要です。文法など知識を身につけることも欠かせません。
将来、英語をどう生かすかは人によってさまざまです。「そのとき」に向けて、かたよりなく基礎的な力を伸ばしていくことが、結果的に入試にも役に立つのではないでしょうか。
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