人と違う「オリジナル」を積み重ねるのが真の学び
世界中からミネルバに集う多様な人たちの話を聞くにつけ、「やはりそういう大学に行くのは『特別』な人なのか」と思ってしまうが、日原さんは「そうは思いませんよ」という。
「だれだって自分に固有の人生を送っているはずですよね。
ユニークなことをしている人に見えるかどうかは、自分が人と違うオリジナルであることを自覚しているかどうかの差でしかないと思います。
日本の社会では、人と違うことがあまりポジティブに受け止められないところもあるので、つい目立たないようにしてしまったりするのかもしれませんけど。
自分は世の中に一人しかいない特別な存在で、自分にしかできないことがどこかにきっとあると、信じることが大事なのだと思います。
これは世界中の70億人、だれにでもいえること。
僕自身のことを考えてみても、僕の関心や能力、性格といった要素の一つひとつを見れば、だれよりも優れているものなんて何もないし、僕だけが持っているものなんてありません。
でも、それらの要素の組み合わせかたはきっと僕だけの固有のものだろうし、そこに僕がいる意味や価値はあるんじゃないでしょうか。
自分なりの要素の組み合わせをどんどん築き上げていく、それが学びを重ねるということなのかなと思います」
ミネルバ大学の1年目は、ものごとの学び方を徹底して学ぶ
日原さんはさらに、4年間に7カ所に滞在するというしくみや、授業のカリキュラムも、ミネルバのよさだと強く感じているそうだ。
「いろんな場所へ行くと、それぞれがユニークだと実感します。そこに住んでいる人のパーソナリティや風土がまったく違うことに気づけておもしろいです。
カリキュラムは、1年目がとくに特徴的で、学び方を徹底して学ぶんです。
具体的なケーススタディは排除して、抽象的な概念や方法論のみをやるので、最初は歯がゆかったものです。
抽象的すぎて、何を学んでいるのかよくわからなかったのです。
ただ、ふりかえって考えるとそれがよかった。
ものごとについて考えたり話したりするときのふるまいかたを身につけるということですから、それはいったん徹底して覚え込まないといけないものです。
たとえば『相関』と『因果』を混同してはいけないだとか。
現実的なことにあえて踏み込まない方法によって、概念がしっかりと僕のなかに植えつけられました。
ミネルバは学びについての科学的な知見を重視して、自分たちの進むべき道を決めています。
それはだれも知らない知見ということではなく、オープンになっているものです。
ミネルバがオリジナルに発見したわけではないけれど、実際に実行しているところは他にまずないわけで、その実行力がミネルバのよさと強みなのだろうと思います」
日原翔 1998年5月13日、埼玉県生まれ。世界最難関ともいわれるミネルバ大学(Minerva Schools at KGI)の3年生。聖光学院高等学校を中退し、経団連の奨学金制度でカナダのUnited World Colleges(UWC)に2年間留学した後、2017年9月にミネルバ大学に進学。キャンパスがなく、4年間で7都市を移動しながらオンラインで学ぶミネルバ大学での体験を、メディアを通して積極的に発信し、日本の教育界に一石を投じている。ソフトバンク孫正義氏が未来を創る異能を開花させる目的で設立した孫正義育英財団の一期生にも選出されている。趣味はフリースタイルダンス。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
※日原翔さんのインタビューは、10月2、4、7、9、11日に全5回配信します。今回は第3回でした。
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