受験体験から学ぶ
この春の大学入試や高校入試を終えた先輩の体験を紹介します。早稲田大学(政治経済学部)に通い始めたIさんの話です。自分自身の興味や関心を突きつめ、将来と照らし合わせて行動したことから進路が見えてきました。(山田泉)
Iさんは高2のときに1年間、ニュージーランドに留学しました。ただし、その経験が直接、「異文化」に触れた最初の機会だったわけではありませんでした。もともとは、小学生ぐらいのころまでさかのぼります。
Iさんの家では、海外からの留学生たちをホームステイ先として受け入れていました。彼らと交流するなかで、日本とは異なる文化に興味や関心を抱いていたそうです。
Iさんは私立高校の出身。3年間まじめに勉強に取り組み、それぞれが大学へ進学するという雰囲気でした。Iさん自身もこの流れのなかにあり、それほど深く将来について考えることはありませんでした。
留学先での出会いが転機
転機になったのが高1の秋。進路を文系にするか理系にするかを選択するとき、自分の未来と向き合い、「高校生活を有意義なものにしたい」と考えるようになりました。手段の一つとして考えたのが留学でした。異文化に対して漠然ともっていた興味や関心を「かたち」にする。留学エージェントをさがし、現地の学校を紹介してもらうなど行動に移しました。
治安がよく、自然も美しいと聞いて選んだのがニュージーランド。ホームステイ先は南アフリカ共和国からの移民の家族でした。この出会いが、Iさんの進路を方向づけるものになったようです。移民した経緯、移民してよかったこと、悪かったこと……。話を聞くうちに、Iさんは「移民」に興味をもつように。なかでも「苦労したことはなかった」という家族に驚いたといいます。そして、日本の現状と照らし合わせて「大学では移民政策を勉強したい」。
外国人労働者の問題など日本の移民政策について学ぶため、視野に入れたのが社会科学系の分野。政治学と経済学をともに学べることに魅力を感じ、早稲田大学の政治経済学部を第1志望に定めました。1年間の留学経験を「強み」ととらえて「グローバル入試」で挑むことを決め、夏ごろから対策に取りかかりました。
徹底的な自己分析で対策
小論文や面接のほか、出願の際に英語の各種検定など外部試験のスコアが求められるのが、この入試の特色。提出する「志望理由書」は「どんな経験をして、いま何を思い、将来は何を勉強したいのか」と過去・現在・未来の流れを軸にすえ、一貫性がある内容にすることを意識しました。
自分の興味や関心、夢や目標について細かいことまで書き出し、自分自身も徹底的に分析。大学が公表している理念やアドミッション・ポリシー(大学が求める学生像)もしっかり読みこみ、対策を練りました。
小論文対策では、過去問(実際の入試問題)を何度も解き、問題の意図をとらえることを心がけました。Iさんは「問題の意図は例年同じなので、大学からのメッセージをおさえられれば、どのような出題であっても解答できる」。
小論文の審査の結果が出てから、次の選考の面接までは1週間ほどあり、この期間を利用して面接対策にも力を入れました。実際に「話す」ことに重きを置き、高校では先生を相手に、自宅では「志望理由書」をもとに自分の考えを整理しなおし、家族を相手に練習しました。
こうした取り組みはもちろん、得意とする英語にも磨きをかけました。留学中から外部試験向けの勉強もしており、帰国後に受けた試験ではハイスコアを獲得。大きな「武器」になりました。
留学での交流や体験などが、自分のなかにあった興味や関心に気がつくきっかけになり、いまの学びにつながっている。Iさんは「勉強ではない活動をしたからこそ、進路が見えてきた」とふり返ります。
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