【異能とは】つきぬけた才能を持つ人を「異能」と呼びます。異能を支援するため、ソフトバンクグループ代表の孫正義さんが「孫正義育英財団」を立ち上げました。財団生に選ばれた第2期生が夢中になる研究を紹介します。
第10回 一橋大学大学院2年 七條ありさ(24歳)
人の健康を守るために、自分にできることは何か? これが現在の専門である「医療経済学」を学ぶきっかけとなった問いです。医療経済学とは、限りある資源を人間がむだなく使うために考える「経済学」の考え方を用いて、健康に関係する分析を行う学問です。
どんな保険や政策が適切かなど、制度を研究することもあれば、食事やたばこをすう動機など、個人の選択を研究することもあります。どちらも人の健康に関わっているからです。
私は現在、大学院で「途上国で、かたよった食事やストレスによる生活習慣病を予防するにはどうすればよいか」をテーマに研究しています。時間をかけて人の習慣を変えていく必要があるので、これまでのワクチンなどを用いた感染症対策に比べて、対策の結果を評価することが難しいとわかってきました。
また、ある地域でうまくいった対策が他の場所ではうまくいかないことが多いため、成功する過程を調べることに社会的な関心が高まっています。現在は世界中の47人の政策担当者が提供してくださった事例をもとに、対策の背景を分析しています。
小学生のときは、好奇心のおもむくままにさまざまなものを好きになりました。犬が好きだったときは図鑑をもって公園に行き、犬と散歩する人に話しかけるなど、何かを好きになると実物を見に出かけました。
中学・高校は兵庫県にある神戸女学院に通い、自分が知っていることは広い世界のごく一部なのだと実感する機会をたくさん得ました。勉強をするだけでなく、毎朝の礼拝や課外学習でいろいろな年齢や職業の方のお話を聞きました。
ある課外学習で、隔離(一般の人から切りはなす)と差別に苦しんできたハンセン病の元患者さんの歴史とその後の生活を知り、病院の外での出来事が人の健康を大きく左右していることにおどろきました。医療の分野を目指す友人のほとんどが医学部に入ります。このことに疑問をもち、自分はちがう分野から健康にたずさわりたいと考えました。
重要な問いには、明らかにするためのアプローチが一つではないことがあります。医学など、私とはちがう考え方をもつ人とも協力しながら、人の健康を守るために自分にできることを続けていきたいです。何歳になっても好奇心を大切に、人生を楽しみます。
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