男性アイドル2人がこのほど相次いで「パニック障がい」であると公表し、治療のため活動を休止しました。聞き慣れない病名に驚いた人も多いかもしれません。誰でも、どこでもなる可能性のある病気だと医師は話します。(小勝千尋)
発作をくり返して不安に
急にドキドキして、手が汗ばみ、口が乾き、吐き気や過呼吸が起こる――。思いがけず、このような「パニック発作」におそわれるのが、パニック障がい(症)です。
「誰でもなる可能性がある病気です」と話すのは、東京医科大学病院メンタルヘルス科診療科長の井上猛さん。最初のパニック発作のきっかけとなるのは、満員電車や寝不足、カフェインの取りすぎなど、日常のふとした出来事です。何がきっかけか分からないこともあります。
パニック発作が繰り返されるうちに、発作が起きることに強い不安を覚えたり、発作が起きた場所や状況に恐怖を感じるようになったりして、生活に支障をきたすパニック症になります。少しのストレスや、何もない状況でも繰り返し発作が起きるようになり、外出できなくなることもあるといいます。
治療には、命に関わる病気ではない、治る病気である、と理解することが大切だと井上さんは話します。場合によっては薬も飲みながら、生活リズムを整え、恐怖心を抑える治療をすることで、良くなるそうです。「同じような症状で、循環器の病気のこともあるので、まずは内科へ。異常がなければ、なるべく早く、専門の医師などに診てもらいましょう」
周りの理解も得て立ち直る
田中えりかさん(東京大学大学院博士課程1年)は大学2年の5月、パニック症を発症しました。クラブ活動で運動中に突然過呼吸になり、それ以降、練習しようとすると軽い発作が起きるようになったのです。症状はいったん治まりましたが、また発作を繰り返し、病院で処方された薬を飲むようになりました。
授業など大学生活が忙しくなり、土日もクラブ活動の練習があって、ゆっくり休めない状況でした。「電車の中や授業中、少し気が抜けると発作が起きるように。発作の間は周りが見えなくなり、恐怖におそわれました」
症状は一進一退でしたが4年の7月、ひどい発作が起きました。外出する気力がなくなり、一日中真っ暗な部屋でベッドに座っていたといいます。家族や友人に助けを求めた田中さん。次第に外に出られるようになり、電車も乗り降りを繰り返すうち、目的地まで乗れるようになったと振り返ります。
今は薬も必要がなくなり、発作が起きそうでも自分でコントロールできるといいます。「周りの人に理解してもらって甘えること、自身についても客観的に理解し、勇気を持って休むことが大切だと実感しました」
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