来年度から5、6年生の正式教科
イラストたくさん/音声や動画で学べる
学校で教える内容を決める「学習指導要領」が10年ぶりに見直されたことを受け、文部科学省は3月、2020年度から小学校で使われる教科書の検定結果を公表しました。5年生と6年生で正式な教科となる「英語」の教科書は、初めて検定の対象となりました。どんな内容になるのでしょうか。(近藤理恵、猪野元健)
出版各社が工夫
教科書は出版社が学習指導要領をもとに作り、国の検定を受けます。検定に合格したものから教育委員会などが選び、学校で使われます。今回、英語の教科書は7社が検定を受け合格しました。
現在5、6年生が外国語活動として学んでいる英語が、来年度から正式な教科となります。今の外国語活動の「聞く」「話す」に、「読む」「書く」を加えた四つの技能をバランスよく学びます。文法は教えません。
各社の教科書は、イラストや写真がたくさん使われています。自分自身のことや、自分の考えを英語で話す項目もたくさんあります。学ぶ単語はおよそ600~700語。今の中学校で習う単語(1200語ていど)も多くふくまれます。
音声や動画を視聴できるQRコードやウェブサイトのURLなどがのった教科書もあります。
5、6年生の英語の教科書を作った光村図書出版英語課編集長の櫻井史明さんは「『英語は楽しい』と感じてもらえるようなつくりにしました」と言います。
イラストやアニメーションで、英語表現が使われる場面を示し、同時に音を聞きながら学べます。会話の学習も、子どもたちが日ごろ体験しそうな場面にして、自然な会話の流れの中で学べるように工夫したそうです。
どの単元も「アニメーションを通して英語を聞き、そこから口に出す練習、やりとりなどの活動をして、最後に書く」という構成です。つくりをシンプルにすることで、初めて英語を教える先生も使いやすくなっています。
自ら考える場面が増える
新学習指導要領のねらいの一つは、子どもたちが「勉強は役に立つ」「他の人と協力すればよい考えを生み出せる」ことに気付き、自ら進んで学ぶようにすることです。
そして、「知識および技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」の三つの力をバランスよくはぐくむことをめざしています。これらの力は、正解がない問題に立ち向かうときに必要です。文部科学省の平千枝さんは「学校で学ぶことも正解が一つではない場合もある。自分の考えに自信を持って、授業に参加してください」と言います。
コンピューターの仕組みを学んだり、論理的思考力を身につけたりするため、プログラミング教育も必修化され、理科や算数などで学びます。
「あわてず、ゆっくり学んで」
教科の英語は先生が成績をつけます。英語が評価の対象になることや、教科書に英単語がたくさん出てくることで身構えてしまう子どもがいるかもしれません。
英語の教育にくわしい立教大学名誉教授の鳥飼玖美子さんは、「英語は難しい。日本語とは単語も発音も何もかもがちがいます」とはっきりと言いますが、そこに魅力があると説明します。「英語という新しい世界をおもしろがってほしいですね」
海外に住んだことがあったり塾などで英語を学んだりしている人は、英語の教科書をすらすらと進められるかもしれませんが、鳥飼さんは「うらやましがらなくていい」と話します。
「今、日本語が話せるように、英語を身につけるには時間がかかります。中学や高校で英語が本格的になると、小学校で英語が得意だった子どもとの差はなくなるでしょう。あわてず、ゆっくり学んで大丈夫です」
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