『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
理科の楽しさと勉強法とは?
文系か理系か、それが問題だ! 進路を考えるとき、みなが真剣に悩むポイントはそこだな。
本来なら「文系」「理系」というカテゴリー分けは、大学で本格的に学問を始めるときにようやく必要となるものに過ぎないのだがな。
それなのに親はつい、文理の選択はまだ先であろう小学生のころから、「うちの子はどうも理系の科目が弱くて……」などと心配してしまうものだ。
実際のところ、文理どちらが得意なのかを、早い時期から見極めることってできるのかどうか。また、文理を比べた場合、理系科目を苦手とする人のほうが目立つ気もするが、克服法ははたしてあるのか。
そのあたりを、『生物と無生物のあいだ』や『動的平衡』などの著作で知られる、生物学者の福岡伸一さんに聞いたぞ。
生物学ということは、学校の科目でいえば、理科が福岡さんの専門だ。そこで理科の楽しさと勉強法について聞いてみると、
「ではまずは、理科という科目の弁護からしてみましょうか」
と、話してくれた。
「日本の教育で『理科系が得意』といえば、ふつうは算数や数学ができることを指しますよね。勉強のよくできる秀才とみなされるには、算数・数学の成績がいいのは必須です。
これは日本に限りません。私は米国で研究していた時期も長いのですが、彼の地で中学高校の入試といえば、大量の数学と国語の問題、それに論文を課されるのが定番です。
洋の東西を問わず、勉強ができる=算数・数学ができるとなっています。
ネーミングからわかるとおり、理科も理科系の科目なのですが、算数・数学と比べると重要性が一段、落ちると思われている。『副教科』的な扱いとなりがちなのは不思議です。
というのも、学問研究の世界では、数学と理科の関係は明らかに逆転するからです。
研究分野は数学より理科の方が圧倒的に広い
世の大半のサイエンティストは理科分野のことを研究しており、数学の研究者なんてかなりの少数派。
私たち科学者から見ても、数学者とはほんのひと握りの天才で、フェルマーの定理だとかポアンカレ予想など超難解な問題に挑み、そもそも理解できる人が世界に10人いるだろうかといった仕事や業績を積み重ねているようなイメージです。
研究者というよりも、先端的なアーティストに近いとでも言いましょうか」
なるほど言われてみれば、我々がだれかのことを「文系向きか、理系向きか」と判断するときの指標は、たいてい「算数・数学が得意かどうか」ばかりだな。
その見方は偏りがあって、あまり正確ではないのかもしれない。
「理科系の知を特徴づけているのは理科なのですが、教育においてはかなり数学偏重となっています。そこにはある種の歪みがあります。
ということはつまり、小中学生のころに算数や数学が苦手だからといって、その人が理系に向いていないとは決して言えないのですよ」
そう言われると、すこし視野が広がる気分だな。次回、福岡さんによる「理科のすすめ」をさらに聞いていくぞ。
福岡伸一 1959年9月29日、東京都生まれ。生物学者。青山学院大学総合文化政策学部教授、ロックフェラー大学客員教授。京都大学大学院で学んだ後、米国のロックフェラー大学やハーバード大学で研究活動をおこなう。京都大学などで教鞭を執り、現職。おもな著書に、『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』などがある。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
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