ママ 友達に「私は卵巣がん検診受けたけど、あなたはまだ34歳だから受けるには若すぎよ」って言われたんですが、私の親戚にはがんになった人が多くて心配なんです。
モモ どんながんですか。
ママ 母と叔母が卵巣がん、祖母が乳がん、叔父が膵臓がんでした。
モモ うーん、確かにあなたは家系的に乳がんや卵巣がんのリスクが高そうです。
ママ どのくらい危ないんですか。
モモ 一般的には卵巣がんと乳がんの発生率はそれぞれ約1%と約10%です。あなたの場合は卵巣がんには3~10%、乳がんには20~40%かかる可能性があります。
ママ えー、そんなに!?
モモ 家系的にがんの発生リスクが高い腫瘍を家族性腫瘍といいます。多くの種類がありますが、その中の一つにBRCAという遺伝子の異常によって起こる遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)があります。BRCAの検査をして異常があれば、卵巣がんと乳がんの可能性は、それぞれ10~60%と40~90%に上がります。
ママ BRCAって聞いたことあります。以前、俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんが予防的に乳腺を摘出してニュースになりましたよね。卵巣がんも関係するんですね。
モモ そう、ですからBRCAに異常がある場合には乳腺摘出だけではなく、予防的に卵管や卵巣を摘出することもあるのです。
ママ 私も遺伝子検査を受けた方がいいかしら。
モモ その判断はとても難しいですね。異常が見つかった場合に医学的にどう対応するのか、遺伝する可能性のある家族にはどう話すか、精神的なダメージにどう向き合うかなど、多くの問題を理解した上で決めなくてはなりません。ですから、遺伝子検査は遺伝カウンセラーを含む専門家とよく相談した上で行うことになっています。
ママ 確かに、よく考える必要がありますね。
モモ とりあえずは、乳がん検診や卵巣がん検診をきちんと受けて、早期発見できれば大丈夫ですよ。
百枝幹雄ももえだ・みきお・聖路加国際病院副院長 1958年生まれ。84年に東京大医学部卒業。東大講師を経て、現在、聖路加国際病院副院長・女性総合診療部部長。生殖医療や内視鏡手術などを専門とする産婦人科専門医。