起きるわけない。あり得ない。フィクションの世界や対岸の火事だとばかり思っていた「今ある生活が侵される危機」。そんなピンチが突然訪れたら、どうするだろう。あまりにも理不尽で原因も分からぬ追い詰められ方をした少女たちの物語を参考に、想像してみてほしい。
『がっこうぐらし!』
既刊11巻
千葉サドル/画、海法紀光(ニトロプラス)/原作、芳文社、各637円
ストーリーは、高校生の少女たちが学校内で部活を立ち上げ活動しているところから始まる。学園生活部という名の部活は、学内で家庭菜園や水遊びなど、様々な活動を皆でするというものだった。彼女たちはとても元気で明るく生活しており、友好的な関係を築いていた。
しかし、学校から帰宅するシーンも、部活が解散する場面もない。彼女たちは、原因不明の病原体に侵された者たちから身を守るべく学校に避難し、バリケードを張り巡らせながら籠城していたのだった。ただ脅威から逃れる日々が少しでも建設的に前向きになるようにと願いを込めて作られたのが、学園生活部だった。
終わりの見えない学園生活も、部活と思えば乗り越えられるはず……という、けなげながらも正気を保つために必要な策だったと解釈してもらえると、彼女たちの危機との闘いがよりリアルに感じられるだろう。
世界のあちこちでおかしな事件が起こり、日本でもこれまでの発想にはない新たな事件が生まれたりしている。急に謎の病原体が世界を侵しはじめる……なんてことは可能性としては低くとも、「ピンチ」と思うことはこれからも誰にでも起こるだろう。よく、ピンチをチャンスに、なんて言葉があるが、手段も分からぬままそう言われても酷だと思う。
この本にはピンチに陥った時の正解の一例が描かれていると感じ、連載の最後にお薦めした。困ったときはどうか視点を変え、理不尽な世界であることを自覚し、生き抜いてほしい。学生時代は短い。毎日を大切に。友人を大切に。
だんみつ 1980年、秋田県生まれ。タレント。多くのテレビやラジオへの出演に加え、執筆活動も行う。近著『壇蜜ダイアリー』(文芸春秋)などのほかに、悩み相談や書評を新聞や雑誌に連載中。
外部リンク