「大きな一歩だ」「改めて対策を進めたい」―。オンラインゲームなどのやり過ぎで日常生活に支障が出る「ゲーム障害」。世界保健機関(WHO)は25日、総会で新たな疾病に正式認定した。県内の医療機関や教育関係者からは認定を評価する声や国を挙げた対策の加速を望む意見が相次いだ。相談支援体制の充実に向け、県や県議会などは全国に先駆けて人材育成などの対策に乗り出しており、認定を契機にした関係機関の連携推進に向けて機運を高めた。
■ 医療関係
ネット・ゲーム依存の外来診療を行う三光病院(高松市)の海野順院長は、「困っている子どもたちが解決に踏み出しやすくなる。大きな一歩だ」と歓迎。早期治療につなげる相談窓口の充実が今後の課題とし、「各機関との連携、医療体制の整備を進めていかなければならないという責任を感じる」と述べた。
「社会的インパクトが大きく、啓蒙(けいもう)につながる」と話すのは、県小児科医会で発達障害対応委員長を務める三好医院(東かがわ市)の宮崎雅仁院長。これまでは現場の医師の経験などに頼る部分が大きかったことから、「病名や診断基準が定まることで、治療法や予防法の研究が加速する」と期待した。
■ 行政・議会
相談支援体制の充実に向け、県では本年度、人材育成を柱とする対策に乗り出しており、県障害福祉課は「ゲーム障害が疾病として正式に認定され、あらためて対策の必要性を強く感じている」とし、取り組みを積極的に進めるとした。
一方、超党派の議員連盟を結成し、議員発議によるゲーム依存対策の条例制定を目指す県議会。議連の会長を務める大山一郎議長は「法整備を含め、政府や厚生労働省などの動きが加速することを期待する」とした上で、議会として引き続き予防策などの調査研究、行政への政策提言などに尽力する考えを強調した。
■ 学校現場
県教委は、本年度からスクールカウンセラーなどを対象とした研修会をスタート。学校現場で子どもや保護者からの相談に応じる人材の育成に力を入れており、「引き続き、実態の把握や対策をしっかりと進めていく」とした。
高松市教委の藤本泰雄教育長は「危険性や予防の重要性への意識がさらに高まってくるだろう」と評価。「医療など他機関との連携をより強める契機にし、地域を挙げて幼少期からの予防啓発に注力していく」と強調した。本年度、生徒のネット・ゲーム利用の実態調査を予定している紫雲中学校(高松市)の久保朗校長は「ゲームは身近な遊びだけに、依存は人ごとではなく誰もが陥る可能性がある。生徒や保護者への予防啓発に改めて努めたい」と話した。
◎ゲーム障害の治療や研究を行う国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長の話 病気と認定されることで、原因や治療法の研究が進むと期待される。有効な予防策もできるだろう。患者の多くは未成年の男性で、ネット接続型のオンラインゲームが原因の場合がほとんどだ。子どもの方が“はまる”傾向がある。ゲームを始めるのはなるべく遅い時期がいいし、遊ぶ時間を決めることが重要といえる。依存の傾向があれば早めに病院を受診するなど、外部に支援を求めてほしい。
◎教育評論家・尾木直樹氏の話 国内はもちろん、世界各国の子どもの健やかな成長を守るための大きな前進だ。医療体制を整えることはもちろん、ゲームで遊ぶ子どもたちが依存症に陥らないようにする教育や家庭の取り組みをより進めていくため、いろんな機関が連携することが大切。韓国が行っているような子どものネット依存度チェックの実施など、国による政策にも期待したい。
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