多度津高校(多度津町栄町、岩沢正俊校長)の海洋生産科栽培技術コースは、淡水魚のアユを海水で養殖することでアユに特有の寄生虫をなくす実験に成功した。刺し身などの生食が可能なのが特長で、初年度は約300匹を県内の三つの料理店に提供する。同校のオリジナルブランドの養殖魚として、普及に向けて品質の向上や技術の確立をさらに進める。
大坂吉毅学科主任によると、アユは「横川吸虫」などの寄生虫が多く食中毒の危険があり、生食に不向きで調理方法に制限がある。そこで横川吸虫などがいない海水で養殖し、寄生虫の恐れがない安全で付加価値の高い養殖魚を開発しようと、昨年から3年生の課題研究で実験を始めた。
アユは海水中のビブリオ菌に特に弱いため、昨年5~7月に行った2回の実験の失敗から、瀬戸内海の水温が15度を下回り、同菌が休眠状態になった11月中旬から3回目の実験を実施。この時期は通常、産卵シーズンに当たるが、業者が約3カ月早くふ化させた人工種苗を利用して養殖した。その結果、ほぼ全てが5月中旬までに出荷サイズ(約20センチ、約80グラム)に成育した。
海水温が低い冬の瀬戸内海の特性を生かすことで、海水を冷却するための費用をかけず、薬も使用せずに同菌の問題を解決できた。さらに、アユが一般に市場に流通するより早い時期に出荷できるメリットがあるという。
アユの英名スイートフィッシュから取って「マリン・スイートフィッシュ」と命名した。川魚のアマゴを段階的に海水に慣らす手法で養殖したサツキマスに続く同校の第2弾のオリジナル養殖魚で、アユは幻の高級魚とされるサツキマスに対して消費者になじみが深いため、需要は大きいとみている。
高松市の料亭「二蝶」に持ち込み、料理人に評価もしてもらった。山本亘総料理長は「もう少し身が締まれば、刺し身の食感が良くなる。また、刺し身にするにはサイズが大きくなると扱いやすい。面白い特徴がある魚で期待が持てる」と話していた。
引き続き品質や歩留まりの向上などの改良を続け、将来的には養殖を手掛けたいという漁業者がいれば技術や情報を提供したいとしている。3年の大谷玄樹さんは「サイズアップなどに工夫の余地があり、研究や実験に取り組みたい」と意欲を見せていた。