『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
「自分プロジェクト」が記述の力をのばす!
教育改革によって増えることとなる記述式問題対策として、清水さんは「自分が掘り下げたいプロジェクトを持つ」ことを挙げてくれたぞ。
「宇宙の秘密でも海洋の神秘、明治時代の世の中でも何でもいいのです。教科の枠を飛び越えて、興味のあることを深掘りしていきましょう。
ただしここでも、子どもに丸投げして『とにかく自分で調べなさい』とはしないほうがいいですね。道筋は与えてあげるべきです。
小学校時代の夏休みの自由研究、あれは自由に研究してみなさいという丸投げだから、子どもとしてもちょっとつらくなってしまうのです。
具体的には、探求する内容を子どもが決めたら、英数国理社の5教科からその問題にひもづく考察を進めてみようかと提案すると効果的です。
たとえば人工知能に関心を持ったとしますね。ならばまずは社会科の観点から、人工知能が社会に及ぼす影響を考えてみる。続いて英語で、英語の関連文献を読んでみる。
理科では人工知能がおこなうディープラーニングのしくみを探ってみる。数学からは、知っている知識の範囲で人工知能の課題処理方法を実際に計算してみる。そして国語なら、それら仕入れた知識をもとに字数を決めて論述してみる。
5教科それぞれの視点を用いると、興味を持った対象を複眼的に、うまく掘り下げていくことができるのです。そうか、だからこの5教科が主要な学習分野になっているのかという気づきにもつながりますよ」
親はそうしたガイドラインを示すことで、学びの世界へのよき案内役となれるのだ。
改革の内容をしっかりつかんだ親が子のよき案内役となる
子どもが興味を持ったことに、同じように関心を持つ。そうした姿勢が大事だと、清水さんは強調する。
その伝でいえば、教育改革を経た学びの世界に旅立つ子どもたちのため、親はもっと「これからの教育の世界」を知るのがいいと清水さんは教えてくれた。
「教育改革の内容やその背景を、まずは子を支える親が押さえておくのは重要です。なぜそうした改革がおこなわれることとなったのか。これは時代と社会構造の変化に起因します。
これからはグローバル化がいっそう進み、コミュニケーションツールとしての英語の重要性が増していきます。だから英語学習でも『読む・書く・聞く・話す』の4技能をさらに学ぶこととなったのです。
また、これからは先行きが容易に読めない、不確実な世の中になっていく。そんな世界に入っていく子どもたちは、『生きる力』を養わなければ。そこで思考力・判断力・表現力が必須となり、それらを養える教育に転換しようとしているわけです。
そうしたバックグラウンドがわかれば、子どもにどんな力をつけさせなくてはいけないか、おのずと見えてくる気がします。
10回書いて覚えよう、それでダメなら100回書いて!という暗記テクニックを強いるのは違うんじゃないか。それよりも正しく考えて解を導く方法を身につけてほしい、といった発想になるのではないでしょうか。
変化の背景を知れば、学ぶ子どもの側・学びを促す大人の側の双方とも、納得感を持って勉強を進めていけると思うのです」
なるほどそうした境地へ至るにも、「学びの力」こそ必要になるといえそうだな。
清水章弘 1987年、千葉県生まれ。私立海城中学高校、東京大学教育学部を経て、同大学院(教育学研究科)修了。勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を東京と京都で運営。著書は『東大生が知っている 努力を結果に結びつける17のルール』(幻冬舎)など多数。最近は、TBS系「教えてもらう前と後」(火曜よる8時~)に出演し、次回は4月23日(火)。1児のお父さん。
* * *
「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
外部リンク