本屋さんにはたくさんの本があふれ、お子さんに手渡す1冊に迷ってしまうことがありますよね。子どもの本を専門とする東京子ども図書館(中野区)の司書・床井文子さんが、最近出た本の中から、おすすめの3冊を紹介します。今日は、高学年からの1冊です。
『夢見る人』
作 パム・ムニョス・ライアン、絵 ピーター・シス、訳 原田勝、岩波書店、2592円
雨だれの音がさそい出すのは
チリ南部の小さな町テムコ。体の弱いネフタリは、ベッドの中で雨の音を聞いていました。
ピチャ ポタッ、ポタッ、ポタッ ピン、ピン、ピン、ピン
雨だれは少年を空想の世界へとさそいます。船長になって、波を切り、青い海を進むのです。
突然、彼はお父さんが鳴らした笛の音で現実に引きもどされます。仕事に苦労した父親は、空想にふけってばかりの息子の将来が心配でたまらないのです。
お父さんに連れられ森へ出かけたネフタリは、巨大なカブトムシやワシを見ました。持ち帰った松かさは、鳥の羽根や卵などの宝物に加わりました。
この本は、チリの世界的な詩人、パブロ・ネルーダの少年時代の物語です。父親からどんなに止められても、夢見ることをやめなかったネフタリ。雨、森、松かさ、海、恋など、少年の記憶や心の内側に広がる世界が、空想的な絵とともに、豊かにえがきだされます。
少し難しいところがあるかもしれませんが、南米の地で育まれた、詩人の心の中をのぞいてみてください。
外部リンク